住友理工と前橋工科大学は、天然ゴムに含まれる成分の材料特性を分析した結果、天然ゴムの特性予測・改良技術に向けた指針を得ることに成功したと発表した。本成果は4月 15日に英国の総合科学雑誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された。
天然ゴムは、特有の粘弾性を発揮するために不可欠な成分であるポリイソプレンに加え、天然物由来の多様な代謝物のタンパク質、金属塩などを含有する。ポリイソプレンは化学合成したものも広く用いられている。
天然ゴムに含まれる多様な物質が、製品に優れた特性を付与する一因だと考えられてきたが、含まれる物質の種類や、製品の機能・性能との関係はほとんど解明されていない。
今回の論文では、従来は試作をしなければ明らかにできなかった特性が、今後はデータを活用した予測により天然ゴムのポテンシャルを一層引き出せる可能性を示唆している。また、今回の知見を発展させることで、将来的に天然ゴムの性能・機能を超える物質を人工的にデザインできることが期待される。
天然ゴムは、パラゴムノキから採取したラテックスと呼ばれる原料から製造され、柔軟性や耐久性などの優れた特性を有している。ゴム材料は、天然ゴムと合成ゴムに大別され、天然ゴムは「非ゴム成分」を含んでいる点が、特性の源であると考えられている。しかし、非ゴム成分は数百種以上と多岐にわたり、特性の予測・改良に全ての成分を考慮することは現実的ではない。そこで、どの成分が特性とより強い相関を持つのか明らかにすることで、特性予測・改良手法への応用、ひいては成分と特性との因果関係を踏まえた特性向上を目指している。非ゴム成分の特性への影響の解明と、天然ゴム製品の性能向上を目指し、共同研究を実施していく。
同研究は、非ゴム成分である代謝物を幅広く分析するオミックス技術を用いて、毎月のラテックスに含まれる代謝物を分析した。
それらの分析値と天然ゴム加工後の特性値を組み合わせた解析を行なった。その結果、各特性を制御するために考慮すべき代謝物数の指針が得られた。数百種以上検出された代謝物から、各特性について5種程度の代謝物を選択し、特性値の変化を確認できた。
今回の成果は、原料代謝物量の情報を利用した天然ゴムの特性予測・改良技術に向けた一つのアプローチを示すことができたと考えている。
2025年04月17日