NEDO 熱膨張が小さな樹脂複合材料ペレットの量産化に成功

2012年02月15日

ゴムタイムス社

 NEDOの産業技術研究助成事業の一環として、名古屋大学の竹中康司准教授は、独立行政法人理化学研究所、産業技術研究助成事業株式会社高純度化学研究所と共に、大きな温度が上がると縮む性質である、負熱膨張特性を示すマンガン窒化物を熱膨張抑制剤として配合した樹脂複合材料ペレットを、産業利用に対応できる100 kgレベルで製造することに成功した。

 この材料は室温を含む広い温度域で熱膨張が低く抑えられており、とりわけ20~70 ℃では線膨張係数がおよそ5 ppm/℃と、樹脂単体に比べて1/10程度、一般的に低膨張材料とされるセラミックと比べてもより小さくなっている。マンガン窒化物の組成や樹脂の種類、それらの配合比を調整することで、熱膨張特性を制御することが可能だ。
 製造されたペレットは、通常の射出成形のラインで加工が可能であり、部材のわずかな歪みがピントのぼけなどにつながる光学機器はじめ、製造・加工設備、計測機器など今後の広範な実用が期待されている。

 この成果は、2012年2月15日~17日に開催される「nano tech 2012」(東京ビッグサイト)で展示を予定している。

 特徴は以下の通り。

・竹中准教授(理化学研究所客員主管研究員)らは、製造途中での亜鉛揮発により大量合成が難しかった亜鉛系に着目し、若手研究グラントの一環として、その製造技術開発を進めてきた。

・製造途中での亜鉛揮発を抑えることができる製造技術を確立し、亜鉛系熱膨張抑制剤を100 kgレベルで大量合成することに成功した。

・負熱膨張性マンガン窒化物の著しい特徴の一つは、その組成を調整することで、負熱膨張の温度域や大きさを自在に変えられる。

・通常の射出成形のラインで加工が可能であり、部材のわずかな歪みがピントのぼけなどにつながる光学機器や半導体製造装置などの製造・加工設備、計測機器など、今後の広範な実用が期待されている。

 同社は今後、樹脂だけでなく金属など他の素材との複合化技術を開発し、このマンガン窒化物熱膨張抑制の適用可能性を広げていく。これらマンガン窒化物の特徴である「特性制御のしやすさ」を活かし、様々な産業分野から出される熱膨張制御の要請・要望に応えるとともに、新しい用途を提案していく。

 

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