ピレリの2012年仕様タイヤは、コンパウンド間の性能差を縮小させることによって、より多様なレース戦 略を提供することを実証した。 オーストラリアGPには、新型P Zeroイエロー・ソフトと新型P Zeroホワイト・ミディアムタイヤが選択されていたが、アルバートパークにおける金曜日のフリー走行がウェットコンディションで行われたため、ドライバーたちは、レース前にドライ路面での走行を十分に行うことができなかった。
昨年同様、上位入賞者は、2回ストップ作戦を採ったが、ミディアムとソフト間の性能差は、ラップあたり0.5秒程度だったため、タイヤの使用方法は昨年とは違う様相を呈した。2スティントをソフトタイヤで走行するドライバーもいれば、ミディアムで走行するドライバーもいた。
ザウバーのセルジオ・ペレスは、昨年に続き、1ストップ作戦を採った唯一のドライバーとなった。彼は、ミディアムタイヤでスタート後、24周目でソフトタイヤへ交換し、8位入賞を果たした。
レースのターニングポイントの一つは、36周目のセーフティーカーだった。これによって、コース上のマシンは一団となり、レッドブル・レーシングのセバスチャン・ベッテルは、ピットインでマクラーレンのルイス・ハミルトンをパスし、2位の座を確保した。セーフティーカーの直前に同時ピットストップ作戦を敢行したところまでは、マクラーレンのタイヤ戦略は完璧に機能していた。残り16周というところでセーフティーカーが導入された時、トロ・ロッソ以外のチームのドライバーは、P Zeroホワイト・ミディアムタイヤを装着した。
再スタート時、ラップリーダーのジェンソン・バトンは、クールなコンディションにもかかわらず、セクター1で2位を引き離し、ミディアムコンパウンドの迅速なウォームアップを示して、オーストラリアでの自身3度目の優勝を果たした。2位となったベッテルは、バトンとは異なる戦略を採り、第2スティントにソフトタイヤを使用していた。昨年、ベッテルは2位に22秒差をつけましたが、今年、バトンはわずか2秒差での優勝した。
最後の10周、わずか5秒差の中に上位4人のドライバーが走行しており、ファイナルラップまで表彰台の行方は確定しない状況。ワールドチャンピオン経験者、ロータスのキミ・ライコネンは、長い第1スティント(この間、一時は2位を走行)によって、18番グリッドから7位入賞を果たした。
レースのファステストラップは、キャリア13度目の優勝を果たしたジェンソン・バトンが、P Zeroホワイト・ミディアムタイヤで記録した。ソフトタイヤの最長スティントは、ペレスによる33周、ミディアムタイヤの最長スティントは、メルセデスのニコ・ロズベルグによる26周だった。
ピレリ・モータースポーツ・ダイレクター ポール・ヘンベリーは「オーストラリアGPは、まさに期待通りとなり、コンパウンド間の性能差を縮小し、ピーク時の性能をより持続させることによって、より多くの戦略を可能にするという我々の目的を達成することができた。我々が実現したかった戦略的なピトストップが多く見られたことは、興味深いこと。また、昨年にはなかったことだが、ソフトタイヤよりもミディアムタイヤが多く使用された。戦略の幅は広がったが、スタートから劇的なファイナルラップ(一人のドライバーがクラッシュし、8~10位のドライバーがほぼ同時にフィニッシュラインを通過したの)まで、僅差のバトルが繰り広げられた。速いペースを維持しつつも、ソフトタイヤの摩耗とデグラデーションは、ラップあたり0.1秒ほどで、上位ドライバーは2回ストップ作戦を採った。ジェンソン・バトンとマクラーレンのスマートな勝利と、母国で自己最高位を達成したマーク・ウェバーを心から祝福したいと思う」と述べた。