ドイツの特殊化学品メーカー、ランクセスは、同社の完全出資子会社であるラインケミーが、米国のタイヤキュアリングブラダーズLLC(以下 TCB社)を買収したと発表した。
タイヤ業界向けの有数のブラダーメーカーであるTCB社は、アーカンソー州リトルロックに本社を置き、年間製造能力40万ユニットを超えるブラダー製造施設を稼動している。約100名の従業員を擁し、2011年度の売上高は2100万米ドル、主に北米市場への供給を行っている。
タイヤ加硫用ブラダーは、タイヤの製造工程において使用される。未加硫タイヤをタイヤ加硫用プレス機に挿入し、プレス機を閉じた後、タイヤの内側からブチルゴム製加硫用ブラダーを高温・高圧下で膨張させ、圧力によりタイヤを内側から金型に押し付けることで、タイヤの最終的な形状を作り、加硫してタイヤを製品化するもの。
タイヤ加硫用ブラダーの需要は、今後数年間の世界の年平均成長率が約5%と見込まれているタイヤ生産量と並行して増加すると予測されている。車社会化のメガトレンドがこの成長を支えており、ブラジル、中国、インドなど各国における中産階級の増加がその需要の原動力となっている。
また、タイヤ加硫用ブラダー製造を外部に委託するタイヤメーカーが増加しており、製造の最適化を図り、タイヤ加硫用ブラダーの専門メーカーが高品質の製品を提供できるという利点がある。世界のタイヤ加硫用ブラダーの市場規模は、3億ユーロを越えると予測されている。
ランクセスの経営委員会メンバーであるレニェー・ファン・レッセルは「TCB社の買収は、ラインケミーを高品質ブラダーのグローバルメーカーとして位置づける戦略の一環。タイヤ産業において増加する顧客への供給力を確保し、さらには、トラック、超大型車両、農業用車両および建設車両向けタイヤ加硫用ブラダー市場にも参入する。」と述べている。
ラインケミーは、昨年、アルゼンチンに本社を置くDarmex社の買収を通してタイヤ加硫用ブラダー製造市場に参入。ラインケミーのタイヤ加硫用ブラダーは「レノシェイプ(Rhenoshape(R))」の商標名で販売されている。
売買契約は直ちに締結される予定で、買収価格は公表されない。 これによりランクセスは、タイヤ産業におけるプレミアムサプライヤーとしてのポジションを強化する。