道路橋免震用ゴム支承 積層ゴム試験方法がJIS化

2012年04月02日

ゴムタイムス社

 道路橋免震用ゴム支承に用いる積層ゴムー試験方法(JIS K 6411)のJIS規格が制定(3月21日)された。
 同JIS規格は地震時にも橋梁の倒壊防止を目的とした極めて有効な免震用ゴム支承に用いる積層ゴムの普及促進を目的として制定されたもので、建築免震用積層ゴム支承のJIS規格2件が昨年8月22日に制定・公示されたのに続くもの。
 日本ゴム工業会では2005年より、ISO/TC45国内審議委員会の中に免震ゴム・ゴム支承分科会(主査:東北大学原子分子材料科学高等研究機構 西敏夫教授)を設置し、免震用積層ゴムのJIS化検討を進めてきた。

 制定の背景と経緯
 1930年代頃、ゴム支承は、ヨーロッパにおいてプレストレストコンクリート橋用の固定及び可動支承として,いわゆる“パッド型積層ゴム”が道路橋に採用されている。
 日本国内においては、1950年代にヨーロッパから、プレストレストコンクリート橋の導入と同時にパッド型積層ゴムが使用されるようになった。当初、積層ゴムは固定及び可動支承として、橋桁の回転吸収及び温度変化による桁の伸縮に対応することが目的であった。これらのパッド型積層ゴムの品質管理及び試験方法は、1973年発行の道路橋支承便覧を適用している。
 一方、1972年に地震力を複数の下部構造に分担させ地震力の影響を分散させる目的の地震時水平力分散型ゴム支承が海外に先駆け日本において実用化された。さらに1995年1月に発生した兵庫県南部地震による道路橋の甚大な被災経験を踏まえ、1996年に道路橋示方書・耐震設計編が改定され、免震設計法が具体的に導入されるに至り、免震支承の採用が飛躍的に拡大した。
 これらの道路橋免震用ゴム支承に使用する積層ゴムの品質管理及び試験方法は、2004年発行の道路橋支承便覧を適用している。この度の東日本大震災でも多くの免震橋梁が東日本地方に存在し、その有効性を証明している。世界的に見ても有数の地震国である我が国においては、地震災害の極小化と経済活動持続性の重要性から、さらに免震橋梁を普及させることが大切と考える。
 このような観点から、まず免震技術で世界のトップレベルにある日本が主導して国際規格ISOの制定を目指し、2005年(2000年より審議スタート)に橋梁及び建築関係の免震用ゴム支承に使用される積層ゴムのISO規格が制定された。新規に制定されたISO規格は、技術進歩に対応して2010年に改訂版が制定されている。
 しかし、ISO規格は,それぞれの国によって地震の規模や地震に対する考え方、さらには法規制が異なるため、積層ゴムの性能を規定する評価指標や試験方法の共通認識化に重点が置かれ、具体的な基準値については各国の設計者と生産者の合意によって決めることとするに留まった。ISOが制定されたのを受けて日本における具体的な基準値を盛り込んだJIS規格の検討を免震ゴム・ゴム支承分科会において開始された。

 JIS規格の全体の構成とポイント
 ISO規格は、試験方法、道路橋免震用ゴム支承に使用する積層ゴムの製品規格及び建築免震用積層ゴム支承の製品規格の3部で構成されていた。したがって、試験方法規格は、道路橋用と建築用とで共通である。ところが、日本国内において、道路橋用及び建築用それぞれで既に基準が定められており、その中で要求される特性項目、試験方法、使用される用語などに相違があった。これらを無理に統一することは,非常に困難であり,また,それぞれを併記すれば規格が煩雑で分かりにくいものになる。
 そこで,道路橋用と建築用とで試験方法規格を分離させて、それぞれで規定されている要求特性項目,試験方法,用語などで規格を構成することとした。
 ISO規格では、使用者又は構造技術者が積層ゴムに要求する特性及びそれを確認するための試験条件を定めることとなっているが、JIS規格では、試験方法の標準化を目的として、できる限り試験条件を規定した。
 また、ISO規格では、試験体寸法、試験条件、などの試験方法が製品規格に記載されているため、煩雑で分かりにくかった。そこで、この規格では、試験方法に関することを全て集約することとした。
 現在、道路橋免震用ゴム支承に用いられる積層ゴムは、道路橋支承便覧に試験方法の概要が示されている。しかし、多種多様な製品があることから、積層ゴムの基準値を示したものではなく性能を明らかにすることに重点が置かれている。
 今回のJIS制定に当たっては、積層ゴムに特化して、要求特性、試験条件に関する生産者間、及び生産者と使用者間の認識を統一し、共通化することを目的として規格開発を行った。

 JIS制定による期待効果
 これらのJISが制定されることによって、道路橋免震用ゴム支承に使用される積層ゴムの性能に関する客観的な評価指標及び評価方法が示されることとなり、生産者側にとって新たな目標が定まるとともにコスト改善への道筋が開ける。一方,使用者側においても、製品性能や品質について客観的評価に基づく判断や比較検討が可能となることで、道路橋免震用ゴム支承に使用される積層ゴムに対する信頼が高まり、一層の普及が図られることが期待できる。
 特に,今回の東日本大震災での復興に寄与できるとともに、さらには国際市場においても,日本の優れた免震技術が適正に評価され,その普及が促進されることが期待でき,免震技術,積層ゴムの更なる技術開発の促進にも寄与することが期待される。

 今後の課題
 ISO 22762シリーズには,製品規格も制定されているが,日本国内では,道路橋の架橋地域,対象とする地震動の大きさ、橋の重要度など様々な橋の設定条件に応じて、積層ゴムは,個別に寸法,厚さ,せん断剛性及び固定部材などが設計されるため,寸法を例として見ても規格品としては扱いにくい。よって今回は,試験方法だけを規定したJISとした。
なお,製品規格のJIS策定については、ISO規格で規定されている“考え方”、“基準”などを踏まえ、将来、監督行政庁及び製造者・使用者のそれぞれの意思疎通が図られた上で、計画性をもって臨むべきものとの判断による。

 積層ゴムの構造
 道路橋免震用ゴム支承に用いる積層ゴム支承の構造は、内部ゴムと鋼板を交互に積層し加硫接着することにより、上下方向には鋼板補強効果により硬く、水平方向にはゴム本来の柔らかさを持たせたもので、橋の自重と走行荷重を支えながら、水平方向には地震時の揺れを柔らかく吸収し、橋脚に伝わる地震力を低減させるものです。この積層ゴムにはゴム材料として天然ゴム(RB)を用いたものや、地震力のより低減効果を高めるために、ゴム材料に減衰効果を持たせた高減衰ゴム(HDR)を用いたもの、さらには天然ゴム系積層ゴムに鉛棒を圧入し、鉛の弾塑性効果による減衰効果を付与した構造(LRB)のものがある。

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