宇部興産㈱は、炭酸ジメチル(DMC)の合弁会社を中国に設立することについて、河南省中原大化有限公司、並びにハイケム㈱と合意したと発表した。
合弁会社は、中国第二の石炭事業会社でアジア最大の石炭ガス化企業でもある河南煤業化工集団の化学子会社である中原大化が51%、中国での化学品事業に精通しているハイケムと宇部興産がそれぞれ24.5%を出資して河南省濮陽市に設立予定で、宇部興産からDMC製造技術ライセンスを受け、濮陽市にある中原大化の工場隣にDMC10万トン/年の製造設備を建設し、2013年内の稼動開始を目指す。
DMCは樹脂原料、医農薬原料の他、無公害型の塗料溶剤として注目されており、更に中国ではガソリンや特に軽油の無公害型添加剤として、また世界的なエコカー(HEV、EV)の需要本格化に伴い、リチウムイオン二次電池(LiB)の電解液溶剤としても需要急増が見込まれている。
中国は近年、資源として膨大な量を保有する石炭を燃料ではなく化学原料として利用し、付加価値を高めると共に環境対応を達成することを国家石化振興計画の一部として推進しており、一酸化炭素(CO)を潤沢に得られるガス化設備が増えている。
宇部興産はCOを原料に化学製品を製造するC1ケミカルで世界をリードしており、石炭や天然ガス利用の選択肢を広げるとともに温室効果ガスや廃棄物の排出低減に貢献する技術展開を進めている。
今回ライセンスする技術は、COを原料としてDMCを製造する宇部興産独自の気相ナイトライト技術で、高い安全性と生産性を誇り環境負荷も低いクリーンなプロセス。宇部興産は、合弁会社からDMCを購入し高純度化することで電解液用途での自家消費や外販を行う。LiB電解液溶剤のトップメーカーとして今後の需要の伸張に対応するために、合弁会社設立により、DMCの安定調達を目指す。
宇部興産では1992年に宇部ケミカル工場(山口県宇部市)内にDMC3000トン/年の製造設備を建設し、これまでに15000トン/年まで能力増強しており、20年間にわたる製造経験を基に合弁会社への技術指導を行う。
宇部興産は、LiB電解液の分野でも世界をリードしており、昨年12月に設立したザ・ダウ・ケミカル・カンパニーとの電解液合弁会社では現在、米国・中国・欧州に工場を建設し、グローバルな生産・販売体制を構築する計画を進めていく。
今回のDMC合弁会社をはじめとして、今後、電解液溶剤となるDMCの高純度品についてもグローバルな供給体制を整え、需要拡大に対応していく。