クレハエラストマー㈱は6月の株主総会後の取締役会において、代表取締役の異動を決議した。川村良久社長の後任として、顧問だった泉川治(いずかわ・おさむ)氏が代表取締役社長に就任した。そこで、新社長の泉川氏に抱負並びに事業運営方針などについて話を聞いた。
―社長就任に際して。 泉川社長 東洋紡績㈱の顧問からクレハエラストマーの顧問に就任してからも、まだ日が浅く、引き続いて社長就任となった。川村良久前社長が3ヵ年の経営計画をまとめていただいたので、経営の舵取りは前社長の方針を踏襲し、計画に沿って進めていく。 3ヵ年計画といっても実際の経営は1年ごとのローリング方式を採用している。最終年度の目標は定めているが、今後の経営環境の変化を迅速につかみ、東日本大震災など、予想できないことが突然起こることもあり、環境面を含めて的確に対応していくことが重要だと認識している。 ―東洋紡時代のご経歴について。 泉川社長 元々は営業畑の出身。東洋紡績入社後は10年間、繊維加工事業を担当した。その後、時代の流れで繊維以外の新規事業を推進する機軸が打ち出され、電子材料やバイオ関連事業、水処理装置関連事業、メディカル事業など様々な事業に携わってきた。 東洋紡績では取締役として4年間、経営にあたり、1年間顧問を務めた。そしてグループ会社であるクレハエラストマーの顧問に就任し、工場のヒアリングや経営会議に出席して勉強してきた。 ―クレハエラストマーについては、どのようは印象をもたれましたか。 泉川社長 ゴム材料知識は正直に言って乏しく、商品知識も少ないが、事業運営の基本方針には大きな差異はなく、グループ会社でもあるので骨格は共通であり、心配はしていない。しかし、事業発展を図るためには判断ミスは許されず、業界活動も積極的に行っていきたい。 ―今期の業績予想は。 泉川社長 前期の第99期(平成22年3月21日から平成23年3月20日まで)は、売上高が66億900万円、前期比8・7%増、経常利益は1億1600万円、同41・5%増の増収増益となった。当期純利益は1億6300万円で同94・0%増とほぼ2倍に拡大した。 部門別では、ゴムシート・シート加工品事業が売上高31億9400万円、同12・2%増、ゴム型物・マイニング機品事業は売上高26億3500万円、同3・9%増、繊機品・精密品事業・その他の売上高は7億8000万円、同12・6%増といずれも増収で好調に推移した。 今期は、工場の効率操業、生産性向上のための設備投資を積極展開し、より安定した収益を確保できる企業体質を構築して、高採算プロダクト・ミックスへの誘導により、経営基盤の強化を目指す。 3ヵ年計画の初年度としては、変動費の抑制や各種合理化の推進、そして売上高の拡大により利益を高めていきたい。こうした施策の推進により、損益分岐点を上げず、収益体質の強化を目指す。ROAは現在3%程度であるが、中計の中で、早期に5%を達成させたい。 ―足元の需要動向は。 泉川社長 4―6月は震災後の原材料の供給、調達問題で混乱が見られたが、当社の影響はほとんどなく計画通りで推移した。7―9月は原材料価格の高騰で、収益面で圧迫を受けるが、上期はほぼ予算を達成できる見込み。 シート製品などは下期型の商品でもあり、需要確保に努めたい。耐摩耗製品は建機向けなどで復興需要に期待でき、精密製品関係は前年並みを予想、通期では3%程度の増収を目指す。 ―中長期の事業方針について。 泉川社長 これまで当社は国内マーケットをターゲットにしてきたが、グローバル展開の足がかりとして「海外販売室」を設置しており、この組織を将来的に発展させたいと考えている。事業体制は3つの事業部で構成しているが「海外販売室」は3つの事業を横断する組織であり、将来は海外での生産・販売拠点につながるような組織として育てていきたい。 ◇ ◇ ◇ 泉川治氏の略歴 1949(昭和24)年7月7日生まれ。74年大阪大学経済学部卒、同年東洋紡績㈱入社、98年生化学事業部副部長、2004年参与産業資材部長、06年執行役員、10年顧問、11年クレハエラストマー㈱顧問、同年代表取締役社長。好きな言葉は「人間万事塞翁が馬」。泉川氏は学生時代からこの格言を意識、同氏の経営哲学にも活かされているようだ。
2011年08月01日