カネカ ベース樹脂の高熱伝導化で高熱伝導性樹脂材料を開発

2012年05月28日

ゴムタイムス社

 ㈱カネカは5月21日、熱可塑性樹脂そのものを高熱伝導化する技術を開発するとともに、同技術を応用して高熱伝導性、良成形性、低比重、電気絶縁性を兼ね備えた樹脂材料を開発したと発表した。

 現在、熱伝導性樹脂材料は、自動車、情報端末、照明のような電気・電子機器の放熱材料として注目を集めている。
 樹脂は高い電気絶縁性を有し、成形加工が容易である一方、熱伝導率が低い材料(0.1~0.3W m-1 k-1)であることから、熱伝導性を付与する目的で、大量の熱伝導性無機フィラーを添加する方法が一般的に採られているが、大量のフィラーを添加すると樹脂材料の比重が高くなり、また、成形加工性が悪化するなどの問題があった。

 そこで、同社独自の分子設計と高次構造制御により、ベース樹脂を高熱伝導化し、少ないフィラー添加量で樹脂材料を高熱伝導化する技術を開発した。熱可塑性樹脂において世界初となる同技術の適用となり、汎用樹脂と比較した際、同等の熱伝導性を発現させるのにフィラー添加量を約20 vol%削減できる。
 これにより、従来技術では困難だった10W m-1 K-1以上の高熱伝導性または厚み方向への高熱伝導性を有する、成形加工性の良好な樹脂材料の設計が可能となった。また、ベース樹脂は植物由来度50%強のバイオマスポリマーであるため、カーボンニュートラルの実現にも寄与する。

 同社は、電気・電子機器の発熱という課題を解決する熱対策材料(サーマルソリューションマテリアルズ)の開発を積極的に進めている。すでに2008年12月、熱拡散シート「グラフィニティーTM」を上市し、2009年4月、独自の反応性オリゴマーをベースにした「熱伝導性RTVエラストマー」を発表、2010年1月には同社の改質PET樹脂「ハイパーライト」の技術をベースにした「絶縁熱伝導性樹脂」を発表してきた。
 今般、新技術をベースにした新グレードを積極展開し、5年後の売上高として約20億円を目指すとしている。

 これらの技術内容の一部は、2012年5月29日(火)~31日(木)、パシフィコ横浜にて開催される第61回高分子学会年次大会と、同年6月12日(火)~13日(木)の期間でタワーホール船堀にて開催される第23回プラスチック成形加工学会年次大会にて発表予定。
 同技術は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)平成21年度イノベーション推進事業の助成を得て研究開発したもの。

【新グレードの主な特徴】

▽面内方向14W m-1 K-1グレードおよび等方3W m-1 K-1
▽比重が1.8~2.1と、金属やセラミックスと比べて軽量。
▽V-0相当の難燃性。
▽成形流動性に優れ、通常の射出成形機で成形可能。

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