ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー(本社:米国ミシガン州)は、6月7日、ドイツのシュコパウで「ENLIGHT」(エンライト)ポリオレフィン封止フィルム製造用の工場建設が、順調に進ちょくしていると発表した。完工は2012年末の予定。「ドイツ中部に位置するシュコパウは、有力太陽光発電会社や研究機関に近接する好条件に恵まれ、今後の事業機会が期待される。今回の投資により、ソーラーパネル分野での同社の研究および製品開発も一段と強化される」と、ダウ・ドイツのラルフ・ブリンクマン社長は述べている。世界のソーラーパネル市場は今後数年間に、売り上げ規模が年率約25パーセントずつ増大していくと見込まれている。
同社は、多数に及ぶ商用グレードの同フィルムを提供している他、顧客仕様の製法開発も行っている。これらのフィルムを利用すると、エチレンビニルアセテート(EVA) などを使用した従来の封止材製品と比較して、モジュールの安定性が高まり、電気性能も向上する。同製品は、結晶シリコン(C-Si)モジュールおよび薄膜モジュールにも適した封止フィルム。従来品とは異なり、太陽電池パネルの長期的な効率性を高め耐用年数を伸ばし、モジュールの信頼性を維持してシステムコスト総額の削減を実現する。
「エンライト」フィルムを使用して製造されたモジュールは、高温多湿な条件下に1万時間以上置かれた後でも、効率性の水準の維持が可能。同社の試験では、EVAを使用した材料は通常、2千時間使用後から効率性が急速に低下すると判明しているが、新製品は広い温度範囲で太陽電池を封止でき、その際に発生する泡を従来品とは異なり完全になくすことができる。このため、廃棄物が減少し、メーカーでの製造時聞が最大30パーセント短縮される。この結果、ソーラーパネル・メーカーは、より速く、より低コストでパネル生産ができ、長期的にはソーラー・システムの消費者価格の引き下げにつながると期待される。
同社のフィルムを使用した結晶シリコン太陽電池(PV)モジュールは、ドイツのテュフラインランド(TUV Rheinland) による性能試験も受けており、すべての試験で良好な性能が確認された。
シュコパウの新工場と、タイのマプタプットに現在建設中の工場により、同社の太陽電池モジュール用特殊フィルムの生産能力は3倍以上に増強される。米国オハイオ州フィンドレーの同製品工場は、2010年12月から操業を開始している。