横浜ゴム㈱(野地彦旬社長)のロシアのタイヤ生産販売会社「ヨコハマR.P.Z」(鈴木伸一社長)がリペツク州リペツク特別経済区(SEZ)で建設を進めていた新乗用車用タイヤ工場がこのほど竣工した。
5月30日、現地で行われた開所式にはアレクサンドル・べグロフ中央連邦管区大統領全権代表、原田親仁駐ロシア連邦日本国特命全権大使、オレグ・コロリョフ リペツク州知事、南雲忠信代表取締役会長兼CEOはじめ、ロシア国内のタイヤ販売会社/販売店関係者など総勢200名が出席した。
あいさつに立った南雲会長は「2008年にロシアを訪れた際、成熟し始めた自動車社会と将来への大きな可能性を実感し、生産工場をロシアに持つことが最重要だと判断した。研修のため日本を訪れたロシアの方々と会う機会があり習熟の速さを大変心強く思った。今後、横浜ブランドの高品質製品を市場に供給しロシアの発展に貢献できることを確信している」と述べた。来賓の アレクサンドル・ベグロフ中央連邦管区大統領全権代表は「原田日本国特命全権大使及び南雲会長に新しい工場の開所式にて歓迎の言葉を申し上げ、ロシア連邦ラジミル・プーチン大統領からお祝いの言葉お伝えいたします。横浜ゴムの新しい工場のおかげで、リペツク州では新しい雇用が生まれ、最新技術による日本企業の高品質の製品が作られていきます。まことに有難うございます。将来的に技術的な貴重な知識交換だけでなく文化的にでも取り交わしましょう」とあいさつ。
横浜ゴムが進出したのは首都モスクワから450キロ南にあるリペツク州の経済特別区。新タイヤ工場の建屋面積は4万1850㎡、年間生産能力は140万本(日量4000~5000本)。2013年夏にフル生産に入るがその際の従業員数は550名を予定。
横浜ゴムにとって日本、米国、中国に次ぐ4番目に大きな市場で、日系タイヤメーカーで初のロシア進出となった。新工場ではロシア国内向け主力商品である乗用車用タイヤ「C,drive2」、乗用車用スタッドタイヤ「ice GUARD iG35」などを生産、いずれもタイヤサイズは内径13~18インチ。主としてロシア国内で販売するが、一部商品については欧州にも輸出する。
需要動向を睨みながら今後第2期(建屋面積3万9800㎡)、第3期(同3万㎡)の拡張を行い、第1期と同規模程度の生産能力を順次拡大していく方針。
日系タイヤメーカーで初の進出 年間300万本を販売
日本の大手自動車メーカーがロシアに進出したことで、日本の自動車部品メーカーも相次ぎ進出、横浜ゴムもロシアリペツク経済特区に自動車乗用車用タイヤの生産拠点を建設しこのほど竣工した。
2010年のロシアの自動車販売台数は、政府が同年3月に導入した自動車買い替え支援策の効果もあり、前年比3割増の約190万台まで回復。買い替え支援策は、古い車を廃車にして新車に買い替える際、政府が補助するというもので、2011年は対象をトラック・バスなどの商用車にまで拡大した結果、新車販売台数は265万台までに増加、ロシアの新車販売台数は2012年には300万台の大台に乗るまでの予測が立てられている。
国内政治的にも自動車産業は重要産業と位置付けられており、今後は政府主導で外国からの資本・技術の導入を積極的に図ることが計画されているという。
リペツクではドイツの特殊化学品メーカー、ランクセスの完全出資子会社であるラインケミーが、ロシアとCIS市場の自動車およびタイヤ産業向けに、予備分散ゴム薬品と離型剤の製造プラントの建設を開始した。2013年上半期より生産を開始する。
リペツク経済特区の整備されたインフラと顧客に近接しているという優れた立地性が横浜ゴムのタイヤ工場建設を後押ししたものだが、横浜ゴムではロシアでのタイヤ販売強化を図るため、モスクワに自動車用タイヤの販売会社「ヨコハマロシアL,L,C,」を2005年4月に設立。そのタイヤ販売会社を中心に大手卸売会社を通じた販路開拓の強化、小売店を対象としたヨコハマクラブ・ネットワークづくりを意欲的に進めた結果、ロシアでの2011年年間タイヤ販売本数は前年比28%増の約300万本に達した。ロシア市場での補修用乗車用タイヤの販売本数(年間4000万本)のシェア7~8%を占め、海外ブランドでは第2位の位置にある。
全ロシアに24店舗を展開するタイヤショップ「タイヤプロス」や自動車部品卸「ルーシ」などを通じさらなる拡販を目指す。
ロシア工場開所式で南雲会長があいさつ
「本日はYOKOHAMA R.P.Z.の開所式にあたり、ベグロフ中央連邦管区大統領全権代表、コロリョフ知事 他多くの来賓の皆様の出席を賜り、心より感謝いたします。
ロシア市場は横浜ゴムにおける市販用タイヤの販売では、日本、アメリカ、中国に次ぐ四番目の市場であるだけでなく、非常に将来性のある、また高い市場地位を狙える誠に魅力的な市場であります。
予てより、ロシア市場の重要性は弊社の中でも認識が高まっていましたが、私自身にとっては、2008年に久方ぶりにロシア・モスクワを訪れる機会があり、その時に成熟し始めた自動車社会と将来へ向けての大きな可能性を実感する事が出来ました。それゆえ、将来に向けて、我々の生産工場をこのロシアに持つ事が最重要と判断をし、その為の適切な土地探しを指示したのです。
幸いに、このリペツク経済特区と言う、インフラ整備も進んだ絶好の工場用地を見つけることが出来ました。私自身、この目で経済特区を見て最終のゴーサインを出しました。 ただ、経済特区と言う恵まれた環境ではあっても、やはりロシアでの初めての工場建設ははっきり申し上げて想像以上に難度は高いものでした。しかしながら州政府、経済特区の皆様の強い力添えをいただき、あれからわずか3年余りで、本日の開所式を迎えることが出来た事は非常に感慨深いものがあります。」
高い市場地位狙えるロシア 現地原材料調達比率も拡大へ
「我々の海外におけるタイヤ生産工場は北米と後はアジア諸国が中心です。ロシアでの生産事業はもちろん初めての経験です。ただ私も自信を持って言える事は、やる気のある優秀なロシアの方々が新会社の社員になってくれている事です。
この会社の中心になる多くの方に日本でいろいろな研修を受けてもらいました。私も工場を訪問した折に、何人かの方々に工場で会う機会もありました。その時に熱心で真剣な態度で、仕事の習熟に取り組んでおられるロシアの研修生の方を見て心強く思ったものです。事実、多くの国から研修生を受け入れている我々の工場でも、ロシア研修生の皆さんの優秀さと仕事の習熟の速さは多くの人が認めております。
この後、皆様にも工場をご覧いただきますが、整然としたレイアウトの良い、最新の工場に仕上がっています。ヨコハママインドを持った社員と一緒にヨコハマ文化を定着させ、ヨコハマ標準の高品質製品を市場に供給し、ロシアの発展に貢献できる事を確信しています。今後とも皆様方のこの会社へのご指導とご支援をよろしくお願い致します。」