三菱化学㈱(石塚博昭社長)は11日、鹿島事業所(茨城県神栖市)における石油化学製品の高機能・高付加価値化へのシフトに即応できる体制構築を図るため、鹿島第1エチレンプラント(K1E)及び第1ベンゼンプラント(K1Bz)を2014年の定期修理をもって停止すると発表した。合わせて鹿島第2エチレンプラント(K2E)を5万トン/年増強するとともに、OCU設備(プロピレン年間生産能力 15万トン)の稼動維持に向けた設備対応を図り、事業所内の配管整備を2013年の定期修理時に完了する予定。
この結果、鹿島でのエチレン年産能力は1基54万トンと、現状の2基88万トンから4割弱、ベンゼンの能力も3割強減らすことになる。国内のエチレン設備の停止は01年以来13年ぶり。総投資額は、約98億円。これにより、需要縮小時においてもエチレンプラントの高稼働率維持が可能となり、年間約40億円の固定費削減が図られるという。
国内の石油化学事業は、中東での大規模生産設備の増強、中国での供給能力拡大、北米を中心とし
たシェールガスの台頭などの影響を受け、汎用品から高機能・高付加価値化へのシフトが加速している。このため同社は2009年以降、EO(酸化エチレン)センター化、EC(エチレンカーボネート)の増産、ポリプロピレンの増産、日本合成化学工業社の連結子会社化等高機能・高付加価値化へのシフトを進めてきた。他方、塩ビ事業の撤退、ナイロン事業の売却、テレフタル酸事業の国内撤退及びグローバル対応、スチレン事業からの撤退など汎用品を中心とした事業の整理・縮小も進めてきた。
加えて、2011年に旭化成ケミカルズ社と西日本エチレン有限責任事業組合を設立し、水島地区における両社のエチレンセンターの統合、一体運営に向け検討を進めている。同社は利幅の小さい汎用石化事業の再編を加速する一方、将来の収益拡大が見込める高機能素材に経営資源を振り向ける方針。
当日、記者会見した三菱化学の石塚博昭社長は「国内のエチレン総生産量が500万トンに縮んで行く中で、誘導品も撤退、縮小している。石化事業が日本で生き残るための適切な生産体制としたもので、今後は高機能・高付加価値化製品へシフトする」と語った。 また、エチレンクラッカーのサイズダウンでブタジエンの生産量が落ちることについては「当社はブタジエンをナフサ分解C4留分からの抽出以外の方法で製造するブテン類からブタジエンを製造する新技術を開発しているほか、植物原料からブタジエンを製造する技術を有するアメリカのバイオ系会社と戦略的提携を結んでいる。これらブタジエン製造技術の実用化をスピードを持って加速させる」と述べた。