東洋紡績㈱は6月14日、ポリ塩化ビニルの可塑剤として「Hexamoll DINCH」(1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル)を使用したより安全性の高い医療用血液回路チューブを新たに開発したと発表した。
「Hexamoll DINCH」を可塑剤として使用したポリ塩化ビニル製の医療用血液回路チューブは、国内で初めて厚生労働省の認可を受けた。
今回使用した可塑剤である同製品の特長は、現行の可塑剤に比べ、精巣毒性や生殖発生毒性が認められず、安全性が高い。また従来の医療用血液回路チューブと同等もしくはそれ以上の高透明性(外観)、柔軟性、物性、保存安定性を持っており、医療機器として操作性、チューブ内視認性に優れている。使用例として、当面は一般の心臓手術に使用される血液回路チューブやカテーテルとして使用する。
同社は、2012年6月より国内医療機器メーカー向けに供給を開始し、売上高10億円を目指すとともに、将来的には医療機器メーカー以外にも幅広く展開していくという。
医療用チューブの原料であるポリ塩化ビニル(PVC)は、柔軟性に優れ、化学的に安定しているため、軟質の血液回路チューブ、医療用容器、血液バッグなどの医療機器として幅広く使用されている。これらのポリ塩化ビニル製品には、柔軟性を保持するため、可塑剤として「DEHP」(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)が主に添加されている。
2001年9月、「DEHP」は、使用中に一部が血液中や体液中に溶出して、健康に影響を及ぼす可能性があるとの指摘が、米国の食品医薬品局(FDA)より報告されている。現時点では、ポリ塩化ビニル製の医療機器の使用により、直接的に健康被害が発生したという報告はないが、げっ歯類での精巣毒性および生殖発生毒性が高いと既に確認されており、特に、「DEHP」の曝露に対して影響を受けると考えられる新生児、乳児、妊産婦、授乳婦、小児に対する使用を控え、別の原料を用いた代替品への移行を図るべきと指摘されている。
一方、2002年10月に、厚生労働省も『現時点で「DEHP」を可塑剤に使用したポリ塩化ビニル製の医療用具の臨床上の有用性は否定されないが、患者への曝露は可能な限り低減することが望まれる。ポリ塩化ビニル製以外の医療用具、または、より安全性が高い可塑剤を使用したポリ塩化ビニル製の医療用具の開発を進めること」と指導している。
こうした状況下で、同社は「DEHP」の代わりに、より安全性の高い可塑剤「Hexamoll DINCH」を使用したポリ塩化ビニル製の医療用血液回路チューブを、国内で初めて開発した。