西武ポリマ化成(合田惠二郎代表取締役社長)は17日、新たに開発した耐放射線性ゴムを20日から販売開始すると発表した。
同製品の開発は4月に大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(以下、高エネ)の吉岡正和名誉教授らの協力により行われており、主として大型加速器用地下トンネルや原子力関連施設向けの可とう継手に使用される。価格は従来の可とう継手と比較して20~30%程度のアップ。
通常、ゴムは放射線照射により劣化し物性低下が起きるが、同製品は高線量照射後において従来の可とう継手のゴム材質と比較して物性(伸び)の保持率を6~7倍向上させ、高線量環境下においても製品性能を十分維持することが可能。
可とう継手とは、ゴムと金物を組み合わせた継手で、下水道施設等のコンクリート製の土木構造物の継目部分に躯体内面から設置し、地震等の自然災害の際に震動を吸収するとともに外部からの土砂や水の流入を防ぐもの。後付式の可とう継手による工法は比較的施工が容易で減災効果が大きく、耐震性能の向上を図ることが可能。
しかし、東日本大震災後の原子力発電所の事故を契機に、原子力関連施設等の可とう継手には耐震性能に加えて、汚染水の外部流出防止等のためにより高い耐放射線性も求められるようになった。
今回の開発では、高エネの吉岡正和名誉教授らの協力により、放射線による劣化防止に資する原料ゴムや薬品類の配合の研究を重ねた。性能評価のための照射試験は、原子力関連施設の総合保守管理を手がけるアトックス(矢口敏和代表取締役社長)が実施。実際の使用環境条件を想定して水中及び熱環境下においても実施した。
結果、4月に従来の可とう継手のゴム材質と比較して、高線量照射後の物性(伸び)の保持率を6~7倍向上させることに成功。生産体制も整ったことにより、今回新たな製品として販売を開始する運びとなった。
微量の放射線が発生する研究施設において、その大型加速器地下トンネルの耐震継手(可とう継手)には、高度な水密性や耐放射線性が求められている。同社は、このような研究施設や原子力発電所における広範な施設において、耐放射線性ゴムの可とう継手の需要増加を見込んでいる。同製品は初年度3億円の売上を目指す。