三菱化学(東京都千代田区)とBASF(ドイツ、ルートヴィッヒスハーフェン)は17日、三菱化学が保有するビニレンカーボネートに関する特許を、BASFに使用許諾するためのライセンス契約を締結したと発表した。
ビニレンカーボネートはBASFの電解液の重要成分であり、リチウムイオン電池を生産する電池メーカーにより使用されている。今回の契約により、BASFは両社が製造した電解液を使用する電池メーカーに対して、ビニレンカーボネート使用のサブライセンスを許諾する権利を得ることになる。
同契約は、三菱化学がドイツの化学・製薬会社であるメルク社の電解液事業部門との間で過去に締結していたライセンス契約を、新たにBASFと締結するもの。BASFは本年、メルク社の電解液事業を買収しており、同事業は現在BASFの「バッテリー材料」グローバル・ビジネスユニットに統合されている。
電解液は、リチウムイオン電池内部での電荷移動を可能にするための組成物であり、高い電池性能を得るためには、高品質な電解液が必要となる。ビニレンカーボネートは、リチウムイオン電池に長期的安定性を効率的に付与できる重要な高機能添加剤。
三菱化学電池本部電池機材事業部長の荒木良剛氏は、「BASFへのライセンス供与は、当社の知的財産戦略が実を結んだ一例です。三菱化学はこれまでも、高度な電池性能を必要とするお客様に対し、ビニレンカーボネートのライセンス供与を行ってきました。先進的な研究能力を活用することによって、当社は今後も業界を牽引するポジションを強化していきます」と述べている。
また、BASFの「バッテリー材料」グローバル・ビジネスユニットのシニア・バイスプレジデントのラルフ・マイクスナー氏は、「当社は現在、バッテリー材料の技術と知的財産において、すでに強力なポートフォリオを保有していますが、三菱化学からのライセンスが加わることによって、当社の市場における活動を活発化させ、世界各国のバッテリー・メーカーを支援するという、機能性材料および部品のリーディング・プロバイダーとしての長期的な目標を実現することが可能となります」とコメントしている。
三菱化学は、電解液事業に20年以上携わり、自動車用途で市場の成長が予想される日本、北米、欧州、中国の各地域で、電解液の製造拠点を構築している。
両社は安全で高効率な電気自動車を手頃な価格で実現するためには、画期的な材料と機能性部材が欠かせないとする。そのためBASFは、産業界・科学界のパートナーと協力し、現在および次世代のリチウムイオン電池と未来のバッテリー・システムを担う材料や技術の開発を行なっていく方針。