「マーケットに起点をおき、ナンバーワン、オンリーワン企業を目指す」―こう語るのは今年5月30日付で東拓工業㈱の代表取締役社長に就任した福永誠次氏。初のプロパー社長の誕生であり、福永新社長の経営手腕に期待がかかる。同氏に事業方針と展望を聞いた。
福永誠次新社長は、昭和27年12月5日生まれ、59歳。機械商社勤務を経て、昭和60年に東拓工業入社。平成17年営業部門関西グループマネージャー、18年新規事業開発室マネージャー、19年取締役就任、東京支店長を経て、本年5月、代表取締役社長に就任した。
―社長就任の話を聞いた時のご感想は。
福永社長 荻原隆士前社長から打診を受けた時は、初のプロパー出身の社長として指名され、その意味を考え、責任の重さを痛感した。
東拓工業の歴史を十分承知しているつもりであり、創業者の精神を受け継ぎ、荻原前社長の路線を踏襲し、従業員全員の頑張りで発展させていきたい。
―東拓工業の良い所、逆に弱い部分について。
福永社長 そうですね。長い歴史を有する企業であり、諸先輩方の歴史の積み重ねによる技術、販売力の蓄積はとても大きなものがある。ユーザーからの信頼も厚いことも強みだと認識している。
反面、弱みとしては、今後改善して力をつけていきたいという意味で、新商品開発のスピード化、さらに海外事業戦略があげられる。
―社長に就任され、今のお気持ちは。
福永社長 昨年の震災をはじめとした自然災害や世界経済の大きな変化など、予想を上回ることが起こり、迅速かつ的確な判断が必要な時代になっている。こうした流れに対応するためには、一層顧客志向を強めて製造部門と販売部門が一丸となって顧客に喜ばれる提案型営業、サービス、商品開発などが重要だと認識している。
―具体的な施策は。
福永社長 先ずサービスについては、納期の短縮やカタログの整備、さらにはユーザーを招いての工場見学会の企画や商品知識習得を狙った勉強会の開催など。提案型営業では商品開発にも関係するが、新しい材料を採用した商品の開発と、既存商品から新商品への切り替え、商品のシステム化による新規マーケットの開拓などを積極的に進めたい。新商品開発はユーザー訪問などを数多く行い、ニーズを迅速に把握して少量多品種に対応した開発、販売体制を構築していく。
―今期の業績推移ですが、足元の状況は。
福永社長 国内は引き続き、公共投資関連が低迷しており、工業資材関連の工業用品の需要は低迷し、同部門の第1四半期売上高は前年同期比2ケタ減で推移した。その他の部門は前期並みを確保、第2四半期も厳しい市場環境は続くと予想されるが、東北地域を中心としたインフラ関連の本格的な復興需要に期待、中間期の段階で若干の増収を目指す。下期は前年同期が急速に減少したため需要回復を期待しつつ上積みを図り、通期では前年を上回る業績を達成させたい。
―今後期待する製品・技術は。
福永社長 国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録された「トータク簡易排水装置」の全国販売展開を強化する。橋梁伸縮装置からの漏水を集排水することにより、橋げたや支承などの鋼材が腐食しやすい環境を改善するシステムで、寒さに強く軽量なPP製のフレキシブル排水管で排水し、橋下側から施工できる高い安心性、スピード性が高く評価されている。維持メンテナンスが容易なことも大きなメリットであり、今後の需要増に期待している。システム販売として初年度は5000万円程度、3年後には3~5億円の販売を見込んでいる。
また、各工場では品質レベルの向上を図り、不良品の低減など生産性向上を図る。新商品開発では「TAC」ブランドホースの拡大を進めており、新材料を採用したホースを秋口に上市する計画だ。
―課題だと言われるグローバル展開について。
福永社長 海外事業は、東拓工業(蘇州)有限公司でクリーナーホースを生産、日系メーカーへの安定供給を行っているが、近年は一般産業用ホースの引き合いも増えており、汎用ホースの現地生産化の調査を進めている。日系メーカーの工場向けにダクトホースなどの需要増大が期待され、現在は日本からの輸出で対応しているが、現地生産の品種拡大が大きな課題。
―環境対応について。
福永社長 環境に対する継続的な改善については、積極的に取り組んできた。脱塩ビなど環境に優しい材料を使用した商品開発や環境ISOの取得、さらには業界に先駆けていち早く、ROHS指令への対応を進めている。
―最後に、今後の展望についてお聞きします。
福永社長 これまで培ってきたコアビジネスを大切にして付加価値を高めつつ、どう伸ばしていくか、さらに新しいビジネスの開拓を並行して行うことが国内事業における重点課題になる。国内事業でしっかりと利益を出せる収益体質の改善を構築し、海外事業を早期に決断してグローバル企業として更なる成長を図っていきたい。