キャボットジャパン 新社長インタビュー

2011年08月08日

ゴムタイムス社
石合信正社長

石合信正社長

 キャボットジャパン㈱は今年5月1日付で、石合信正氏が代表取締役社長に就任した。同氏はバイエル、GE、アリスタライフサイエンスなどの外資系企業の経営に携わり、長年にわたる豊富な経験はグローバル化時代に相応しく、卓越した経営手腕が期待される。今年9月には千葉工場の操業50周年を祝い、若手社員の企画による記念式典を開催する計画だ。そこで、石合信正社長に抱負並びに事業方針などを聞いた。

 ―社長に就任され、最初に取り組まれたことは。
 石合社長 本社並びに千葉工場、下関工場の従業員を含め、全社員との個人面談を行った。過去10年間にわたって、私が行ってきた経営方針でもあり、組織の良い点や欠点を理解することができ、従業員のモチベーションに触れ、今後の事業の方向性の取りまとめがスムーズにできる。
 また、2011年度通期予算達成のための確認と、2012年度予算の組み立ても着手した。カーボンブラック事業は装置産業として生産設備が最重要課題であり、とくに設備案件が大きな課題になる。これに並行して3~5年先を見通した中期計画の立案も開始した。
 ―キャボット社の印象は。
 石合社長 今年3月にキャボット社の北アジアジェネラルマネジャーに就き、各種の研修を受けてキャボットグループの世界戦略などを学んだが、キャボットは安全性に対する意識が世界トップクラスであり、トップダウン方式で安全性を追求、その体制も万全なものとなっている。
 キャボットジャパンもグループ方針として、この安全性の意識が徹底されており、下関工場は来年2月に連続無災害操業日数が1万日に到達する。これは、1984年から継続してきたもので、気を緩めることなくこの記録にチャレンジする。
 日本におけるキャボットグループの優れている点は、従業員が真面目で各人のモチベーションが高く、前向きで変化に対応できる点。また、SHE(とくに安全)、コンプライアンス、内部統制などが高水準であること、そしてタイヤ向けカーボンブラックなど強い核となる商品と、日本代表を兼務するキャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インクが取り扱うインクジェットなど将来伸びる商品とが両輪として存在していることが挙げられる。
 ―経営方針について。
 石合社長 キャボットグループは日・北南米・アジア・ヨーロッパに生産拠点を有し、最先端の技術力を駆使して高品質なカーボンブラックを供給している。また、われわれの顧客もタイヤメーカーをはじめ自動車部品メーカーやOA器メーカーなど世界有数のグローバル企業である。日本におけるキャボットグループの知名度は、日本では残念ながらまだまだ低いので、キャボットグループの技術力を活かしつつ、総力をあげて差別化を推進し、日本での存在価値を高めていきたい。
 ―キャボットジャパンの社長としての事業方針は。
 石合社長 日常の強い業務遂行力をさらに強化するとともに、中長期を見据える戦略的、開発的、成果追求型の意思のある方向性を確立する。これにより、収益力を最大化させ、企業基盤を拡大する。社内的には、人材育成も大きな課題。年齢や性別、国籍、前歴にとらわれず、適材適所を推進するため、制度を継続して改善していくとともに、次世代を担うリーダーを輩出させたい。
 顧客としては、とくに日本のグローバル企業をターゲットに、キャボットのグローバル、新製品、新ビジネスなど差別化により食い込みを図り、存在価値を高めていく。
 ―カーボンブラック業界の日本の見通しは。
 石合社長 自動車タイヤは中国など新興国での需要が今後飛躍的に伸び、生産量も着実に伸びていくことが見込まれる。日本ではハイパフォーマンスラジアルの需要が伸びること、さらに環境に配慮した低燃費タイヤのカテゴリーが順調に市場を伸ばしていくと思われる。
 当社のカーボンブラックは、こうした市場の伸びが予想されるタイヤ商品向けおよびインクや塗料用などでの供給拡大、さらに導電性カーボンブラックなど機能付与による新市場開拓にも期待している。
 キャボットが採用しているオイルファーネスカーボンブラック製法は、重質油を原料とし、近代的な高度技術を駆使してニーズにあった製品を開発することができ、主流の生産技術として認知されている。
 ―震災もありましたが、現在の生産動向は。
 石合社長 東日本大震災の影響については軽微で、千葉工場の生産も数日で震災前のレベルに戻った。同業他社の津波による工場被災から東日本における需給はタイト化し、当社もタイヤメーカーからの受注が増え、現在はフル生産を続けている。
 千葉工場だが、今年9月中旬に操業50周年を迎えるので、絆を深め一層の改善を進めたいと思っている。
 ―最後にキャボットジャパンの役割は。
 石合社長 米キャボット社は世界最大のカーボンブラック企業であり、世界の需要地で顧客に選ばれる企業になることを目指しているが、キャボットジャパンは特に中国と並ぶアジア・パシフィック地域の中心的企業であり、極めて重要なポジションに位置しており、世界戦略の中で大きな役割を担う。

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