世界ゴム経済会合実現目指す 天然ゴム価格安定化のため機能強化
天然ゴム価格の安定化のためにはIRSG「国際ゴム研究会」の組織強化が必要。日本ゴム工業会が理事会で「IRSGの現状と課題」を発表し、持続可能なゴム経済実現のための取り組み強化を強調した。
国際ゴム研究会の概要
1944年設立。ゴムの生産国及び消費国双方が加盟する唯一の政府間組織。
天然ゴム及び合成ゴムの需給に関する調査、統計の整備(生産・消費・輸出入を含む統計を中立の立場で分析・提供しており、需給予測も行っている)等、将来の安定供給を確保することを主目的に事業を行っている。
特に天然ゴムについて生産国と消費国の懇談、意見交換の場となっている。近年では、多数のゴム業界関係者を講演者として招き、WorldRubberSummitと呼ばれる会議を毎年開催している。
設立経緯
米、蘭、英の3ヶ国政府が第2次世界大戦による天然ゴムの確保のための協議の場として設置。その後終戦に伴い、天然ゴムの生産復旧・品質確保・価格安定について関係国の協議の場となる。日本は、1952年に加盟。加盟国は日本、シンガポール、インド、ロシア、スリランカ、コートジボワール、ナイジェリア、カメルーンの9ヶ国+EU(27ヶ国)
組織
「政府代表者会合(HOD)」の下に「統計・経済委員会」、さらにその下に民間組織から選出された30名のメンバーから成る「産業諮問パネル(IAP)」(日本からは、日本自動車タイヤ協会、日本ゴム輪入協会、ブリヂストンが参加)を設置している。
また、産業メンバーとして、世界中の約120の民間組織(日本からは、日本ゴム工業会、日本自動車タイヤ協会、日本ゴム輪入協会、東京工業品取引所、ブリヂストン、横浜ゴム、JSR、旭化成ケミカルズ等)が登録している。
現在の課題とその対応
①加盟国の減少=天然ゴム生産国では、インドネシアが2007年、タイが2011年、マレーシアが2012年に退会しており、主要な生産国は不参加。消費国では、2011年に米国が退会。ヨーロッパは、国単位からEUとしての加盟となった。最大の消費国である中国が未加盟。
IRSGの存続を前提に、加盟国政府、産業界メンバーの双方から、関係省庁・業界団体に働きかけ、新規加盟及び前加盟国の復帰を積極的に促す。
②統計の精度向上=将来的には消費実績と予測の誤差を3%以内に収めることを目標とした。問題点を洗い出し、具体的な改善方法を検討するため、統計グループを組織した。今後、生産・加工・消費の各層から人選を進めて新たな統計グループ(恒久的にIAPの中に設置)を構成し、さらに議論を進めることとなった。
③統計以外の事業=加盟国政府から、統計の整備だけでは組織の存在意義に乏しく、事業の活性化が必須であるとの指摘があった。重点項目として、持続可能なゴム経済実現のための取り組みを行うこととなった。
概要=経済、社会、環境の三本柱のバランスに配慮しつつ、生産から流通、消費に至るサプライチェーン全般にわたるゴム経済の持続的な発展を目指すもので、ココア商品協定等で実行されている商品経済の実態把握に取り組む内容となっている。第一段階として、生産段階等の把握のための経済指標の検討に着手し、将来は、ゴム経済関係者が一堂に会する世界ゴム経済ラウンドテーブル会合の実現を目指す。
また、組織の中立性及び生産・消費の双方を代表する特質を生かし、以下の5分野に関する調査を順次行うこととなった。
①植樹政策と天然ゴム生産能力②新規タイヤ規制とタイヤの原材料構成の変化がゴム需要に与える変化③天然ガス源とクラッキング(接触分解)産業の変化がブタジエン供給に与える影響④スモールホルダーへの助言⑤新興国における再生ゴムの統計
日本としての対応
IRSG国内連絡会を通じて情報の共有を行い、新たなIRSGのプロジェクトに対して、業界意見をまとめて日本としての発言を強化する。