トップインタビュー ニッタ 國枝信孝社長

2012年08月21日

ゴムタイムス社

 グローバルNO.1を目指す

 ニッタ㈱は、20年度までの9ヵ年を対象とした中長期経営計画「V2020」を策定し、今年度よりスタートした。12~14年度までの第1フェーズ「壱」では、グローバル・ナンバーワン・パートナーになることを目指し「一味違う、一目置かれる企業基盤を構築する」と國枝信孝社長は語る。

 ―12年度第1四半期の業績は。
 國枝社長 連結売上高は133億7800万円、前年同期比2・4%減の減収となり、損益面でも減収を主因に営業利益は5億8900万円、同16・1%減、経常利益は15億8100万円、同13・2%減の減益となった。最終利益は12億2000万円で同27・3%減となった。販売数量減に加えて、半導体業界の低迷による持分法投資利益の減少も影響して経常利益は2ケタ減となった。
 売上高は、前期の第4Qから四半期ベースで135億円程度で変わりはないが、収益は原価削減効果が出始めている。事業別動向は、半導体・液晶関連のベルト製品並びに子会社、GUAの一般産業品向け製品が需要低迷の影響を受けたが、建設機械向けの油圧ホース・チューブ製品は順調な販売を続けた。また、自社製品では原価削減効果が表れており、空調製品は利益率改善を進め、一定の成果を得ている。

 ―下期並びに通期の業績予想について。
 國枝社長 下期の見通しは、国内景気の回復はズレ込むことが予想され、海外市場も米国は回復基調ながら力強さに欠け、欧州は金融危機問題が解決されず、引き続き低迷、中国も急速な回復には至らず、円高基調も当面続くことが予想され、全体的には厳しい見込みと言えそうだ。
 国内の動向については、震災に対する復興需要が本格化し、秋口以降良くなる要因も見受けられるが、そのプラス要因が前倒しではなく、後ろ倒しで来年以降にズレ込む懸念もある。復興関連では免震ゴムや各種ジョイント製品などを当社では期待する。
 業績予想だが、9月中間連結は減収減益予想であるが、下期の回復を想定して、通期は増収、小幅な減益を計画している。営業利益並びに当期純利益は増益予想だ。

 ―中長期ビジョンを策定されましたが、改めてその狙いは。
 國枝社長 新たなステージを見据え、10年先のあるべき姿を描いた中長期経営計画を策定した。10年後には「ソフトマテリアル複合化技術のグローバル・ナンバーワン・パートナー」として存在することをあるべき姿とし、世界経済の潮流の変化がより顕在化したことにより、新たな需要業界の開拓やさらなるグローバル化の推進、さらに既存事業の再成長を目指すとともに新規事業創出のための戦略推進投資を積極的に行う。
 中計は「価値軸」「地域軸」「競争軸」の3つの方針で構成、9年間を3年ごとに第1フェー ズ、第2フェーズ、第3フェーズに区分した。12年度から3ヵ年でスタートした第1フェーズ「壱」では、グローバルナンバー・ワン・パートナーになること、ナンバー・ワン・バリューの実現、一味違う、一目置かれる企業への基盤作り、組織・個人としてもそれぞれのナンバー・ワンを目指す。
 3年後の業績目標は、連結売上高600億円、営業利益率6%を目指す。3年間の投資は戦略推進ファンドとして25億円、設備開発投資75億円の計100億円を計画する。

 ―本年度の経営方針および課題は。
 國枝社長 中計の最終目標を達成するためにフェーズ1は重要な3ヵ年計画になる。各事業部門で戦略ロードマップを立案したので、初年度は先ず行動に移し、兆しでもいいので手応えを実感することが大切だと考えている。私がとくに強調していることは「ひたすらに」という言葉であり、幹部社員にとどまらず、一般社員にまで浸透させたい。
 中国を含め新興国は思った以上に早く技術力を高め、生産量も拡大させていくだろう。ニッタとして今後も存在感を発揮し、新興国に負けることなく技術力を高める基盤作りが第1フェーズの目的であり、課題でもある。

 ―今後のグローバル戦略について
 國枝社長 今年から来年にかけて、インドとブラジルでベルトのエンドレス加工およびホースアセンブリを行う販売・加工会社を立ち上げる計画だ。
 インドでは、プネに加工所を併設したオフィスを今年10月に設立、年内にもホース販売から開始、来年以降ホースアセンブリとベルトのエンドレス加工を開始する。一方、ブラジルにも同様の加工設備を有するオフィスを年末から来年にかけて設立、グローバルな需要に応える体制を整えたい。また、海外展開の考えではアセアン地域への進出も課題であり、まだ進出先などは未定だが、将来的にアジアのネットワーク化を構築したい。

 ―グローバル化の推進で国際的な人材育成も課題になりますね。
 國枝社長 当社の新入社員は1年間が研修期間で、研修期間中は工場勤務も経験し、外国語の研修も英語、中国語を実施している。このほか、中国人の大学卒者を総合職として本社採用も行っており、優秀な人材が多い。日本企業になじんでもらえる人材の見極めが今後重要になるでしょうね。

 ―中長期経営計画「V2020」の最終目標は。
 國枝社長 大方針として3つ掲げている。1つは「価値軸」であり、強いニッタを目指したナンバーワン志向、ナンバーワン・バリューである。具体的には伝動・高速搬送領域における平ベルトでのナンバー・ワン、圧力伝達、流体移送領域における機能・QCDのナンバー・ワン、さらに成長事業におけるソフトマテリアル複合化部材ソリューションナンバー・ワンである。
 2つ目は「地域軸」。グローバリゼーションの加速とアジアのネットワーク化で、グローバル OEMの開拓や現地人材の育成・現地化の促進、グローバルに戦えるモノづくり力の強化に注力する。3番目は「競争軸」で、開発営業体制の構築並びに周辺領域を含めたソリューション提案力の強化だ。
 最終年度の2020年度は、連結売上高800億円、営業利益率8%を目指す。成長市場への積極投資により生産能力増強を図り、計画を達成させるためには海外販売の拡大が不可欠で、現在の海外生産比率21%が、20年度には40%程度になる。