㈱クラレの伊藤文大社長は8月21日、東京・大手町の東京本社で記者会見を開き、12年度業績推移並びに業績予想、中計「GS―Ⅲ」の進捗状況などについて語った。
今年度の第1四半期連結業績については、売上高885億円、前年同期比1・6%減の減収となり、収益面は営業利益が117億円、同26・0%減、経常利益106億円、同31・9%減、四半期純利益58億円、同37・7%減の大幅減益となった。
伊藤社長は「米モノソル社の買収費用が収益に影響し、また円高による為替差損も収益減の大きな要因となった」と分析。上期の業績予想は「販売面は積極拡販により、当初予想並みを見込み、収益は営業利益、経常利益段階で9%程度、純利益は12%ほど下方修正した。しかし、下期は原燃料価格の低位やモノソル社買収による増販の効果が期待でき、また樹脂事業の市場回復などにより、通期予想は年初予想通りを計画している」と、下期の挽回を強調した。
3ヵ年の中計「GS―Ⅲ」は、長期企業ビジョンで描いた存在感を示すスペシャリティ企業の実現のため、技術革新、地域拡大、外部資源活用、グローバル経営基盤強化、環境対応の5つの主要な経営戦略に基づき、新たな成長ステージへの飛躍を目指す。
今後の事業展開については①コア事業の世界戦略拡大②新事業の創出と拡大③M&Aを含めた提携によるビジネス拡大に注力する。
「コア事業に関しては3年間で2400億円の設備投資を計画しているが、その実行は市場動向を見極めたうえで、慎重に対応していく。2番目の新事業の創出では、新たにTVCMも開始した地球の問題を解決する会社として、地球カイカイをキーワードに、水・エネルギー・電子領域の成長マーケットに参入する。具体的には排水浄化システムや太陽光発電関連、LED・照明機器、液晶ポリマーのフィルム展開など」(伊藤社長)。
業績目標について、伊藤社長は「GS―Ⅲの最終年度である14年度の連結売上高は5500億円、営業利益850億円を計画する。18年ごろの長期ビジョンで連結売上高1兆円、営業利益1500億円を達成させたい」と述べた。
今後、市場拡大が期待されるリチウムイオン2次電池(LiB)の負極材「ハードカーボン」では、植物由来原料による製品事業化のめどがつき、クラレケミカル㈱と㈱クレハとの合弁生産会社を設立することを明かした。
新会社は㈱バイオハードカーボン。クラレケミカルの鶴海工場(岡山県)に年産1000㌧規模のプラントを本年10月に建設着工、来年10月完工、操業開始を目指す。
ハイブリッド車・電気自動車向けのLiB開発が活発化、ハードカーボンの特性に注目され市場拡大が期待され、負極材の需要量は現在の年間数千㌧から、10年後には年間10万㌧以上に達すると予想される。クラレでは、自動車用途を主体に生産体制の整備を進める。
2012年08月27日