ブタジエンフォーミュラーを見直し ブチルゴム能力増強を完了
JSR
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JSR㈱のグループ企業である、日本ブチル㈱(エクソンモービル・ジャパン合同会社との折半出資会社)はラジアルタイヤ向けに使用され需要が増大しているハロゲン化ブチルゴム(IIR)の生産能力増強を同社鹿島工場で進めていたが、本年8月に1万トン能増が完了した。この結果、同社鹿島工場のハロゲン化ブチルゴムの生産能力は年産8万トン体制となった。 同社川崎工場では9万8千トン/年のレギュラーブチルゴムプラントを有しており、今回の鹿島工場のハロゲン化ブチル能増により、8万トン/年をハロゲン化ブチルとして販売していく。
ハロゲン化ブチルゴムは乗用車向けのラジアルタイヤに主に使用されており、近年はその需要が伸長している。今後もアジア地域を中心とした自動車販売台数・自動車保有台数の増加に伴う新車用および補修用タイヤの生産拡大と共に、ブチルゴム市場の増大が続くものと見込まれており、今回の能増はアジアを中心としたハロゲン化ブチルゴムの需要増加に対応するためのもの。
足元の合成ゴム販売は震災復興による生産・販売の回復、前年度能力増強を実施した溶液重合SBRの拡販、主要原材料価格の上昇に対応した価格改定等により売上高は前年同期を上回った。汎用合成ゴムは国内販売が自動車の新車向けタイヤの需要増大により堅調に推移したが、合成ゴム輸出は欧州金融不安から欧州はじめ中国、アジアでの需要が大きくダウン、天然ゴム価格の下落もあり、輸出出荷は低調である。低燃費タイヤ向けのS―SBRは一時期の需給タイトに比較すると需給はやや緩和されているが、欧州向けの落ち込みを除いては堅調に推移しているという。低燃費タイヤ向けに需要が拡大しているS―SBR(溶液重合SBR)については、昨年12月に四日市工場の生産能力を2万5千トン/年増強して6万トン/年とし、欧州では、Styron(Europe), GmbHにて3万トン/年の引取り権契約に基づいた生産を行っており、グローバル生産能力は、合計で9万トンとなった。 タイで計画している新プラント(第1期2013年:5万トン、第2期2015年予定:5万トン、計10万トン/年)を加えて、S―SBR事業の拡大をグローバルに進めていく方針。
一方、自動車用部品を中心とするEPDMは自動車のリカバリー増産を受けて国内販売は堅調で生産はフル稼働となっているが、中国市場での市況軟化もあり、需給は一時期の需給タイトに比較すると緩和されたとしている。EPDMの生産対応については、EPDM事業の供給体制強化を図るため、韓国のグループ企業(錦湖ポリケム)で2013年6月稼動を目指した年産6万トンの新プラント建設を計画している。「 競争力のある錦湖ポリケムで能増を図り、鹿島工場では差別化製品を中心とした生産に注力。国内顧客への安定供給を図っていくかが課題」(藤井安文石化事業企画部長)としている。
原料の安定確保に注力
本年の需要見通しは自動車のエコカー減税の終了による反動懸念や中国の景気減速、欧米の金融不安など先行き不透明としながらも、需要がどう振れても対応が可能となるよう、在庫を抑え、原料動向を見極めながら市場の動きに素早く対応できる警戒的な生産体制の確立が課題としている。その原料動向について、同社では合成ゴムの主要原材料であるブタジエンについて、今春時点で、「国内エチレンセンター稼動低下に伴うブタジエン外部購入の増加、その外部購入ブタジエン価格の高騰、ナフサC4留分の値上げの三重苦にある」とし、合成ゴム価格の値決めに当たりブタジエン価格によるフォーミュラー制を導入した。このフォーミュラーは、市況ブタジエン価格とその比率に応じてフォーミュラーにより値決めするものだが、現状、エチレンセンターの稼働率が更に落ち込んでいることから、「購入ブタジエンの増加に伴い、フォーミュラーにおける市況ブタジエン比率を改定せざるを得ない状況になりつつある」とし、製品の安定供給のためには、フォーミュラーの改定検討が課題になりつつあるとしている。
(2012年9月3日紙面掲載)