東アジア、インド進出が加速
2012年もゴム関連企業のグローバル展開が加速している。本紙がまとめた年上半期における海外進出状況をみると、タイヤメーカー、工業用品メーカー、材料メーカーとも積極的な投資活動を行っており、中国を含めた東アジアを中心にインド、南米、ロシアなど拠点拡大が進んでいる。
タイヤ
◆ブリヂストン
ベトナムハイフォン市のディンブー工業団地に建設する乗用車用ラジアルタイヤ新工場の建設予定地で起工式を実施した。新工場は、欧米や日本への市販用タイヤの輸出基地として、主として汎用タイヤを供給する。14年の操業開始を予定しており、工事が完成する16年上期には日産約2万4700本の生産能力を見込んでいる。
◆横浜ゴム
インド・デリーに隣接するハリアナ州に乗用車用タイヤ工場を建設すると3月に発表した。第1期として14年から年間生産能力70万本での操業を計画。工場建設の総投資額は約44億円。新タイヤ工場は、横浜ゴム全額出資で設立したヨコハマ・インディアの生産拠点として建設する。
◆横浜ゴム
ロシアのタイヤ生産販売会社「ヨコハマR・P・Z」が建設を進めていた乗用車用タイヤの新工場が竣工し、5月に開所式を行った。新タイヤ工場の建屋面積は4万平方㍍強、年間生産能力は140万本(日量4000~5000本)。13年夏にフル生産に入る予定。
◆住友ゴム工業
インド市場での市販用タイヤの販売強化を図るため、アジアの販売統括会社、スミトモラバーアジアとシンガポールのスタンフォード社との合弁で、現地販売会社「ファルケンタイヤインディア」をインドに設立。13年4月から営業開始する。インドの市場ニーズを的確に捉えた商品投入および販売活動により、市販用タイヤの販売拡大を目指す。
◆住友ゴム工業
中国・中国湖南省長沙市に建設した中国新タイヤ工場「住友橡膠(湖南)有限公司」の開所式を7月、行った。中国は世界最大の自動車市場であり、内需拡大に牽引され自動車生産・販売台数が急伸している。自動車用タイヤ需要も急拡大しており、同社では中国・湖南工場の稼動により、中国市場での生産販売体制を強化していく。15年には日産3万本体制を構築する。
◆住友ゴム工業
スミトモラバータイランドのモールド(金型)工場の開所式を3月、同工場敷地内(ラヨーン県アマタシティ工業団地)で行った。世界的なタイヤ需要の増加、とくに新興国での大幅な需要増に対応し、本年末には日産7万本、14年には日産9万本を生産する世界最大級の工場を目指す。
◆住友ゴム工業
世界的な農業機械用タイヤの需要拡大に対応するため、タイ国ラヨーン県アマタシティ工業団地に農業機械用タイヤの新工場建設を発表。総投資額は約100億円で、14年からの生産開始を予定している。
◆住友ゴム工業
中南米地域(ブラジル)における同社グループとして初のタイヤ工場の起工式を今年1月、パラナ州ファゼンダ・リオ・グランデ市で実施した。敷地面積は50万平方㍍で生産開始は13年10月の予定。16年末には月産能力2200㌧となる。総投資額は約280億円。
原材料
◆宇部興産
インドにおけるグループ製品の販売・市場開拓の拠点として現地法人を設立した。社名は「UBEインダストリアル・インディア・プライベート・リミテッド」で、タイ子会社が出資。同社グループのタイ拠点での主力事業であるナイロンやファインケミカル製品の販売を拡大させる。
◆新日鐵化学
中国江蘇省でカーボンブラックの生産・販売拠点を新設する。世界最大のコールタール蒸留企業である米国コッパース社と戦略的提携により事業化する。新興国市場での需要増に応えるため、コッパース社から供給される原料をベースに、電炉用黒鉛電極の原料となるニードルコークス、自動車用タイヤなどの原料となるカーボンブラックを生産する。投資額は約130億円、売上高は約200億円を見込み、設備の稼働開始は2014年6月頃を予定。
◆三井化学
中国石油化工股份有限公司と共同出資により、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPT)を製造・販売する合弁会社「上海中石化三井弾性体有限公司(SSME)」を設立した。新会社の年産能力は7万5000㌧。
◆三井化学
全額出資子会社、三井化学東セロ(MCTI)と、タイのSCGケミカルズ社は、高機能包装用直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムの合弁会社と工場の設立を決定した。同フィルムは、プライムポリマーが製造・販売するポリエチレン「エボリュー」を主原料とした、高機能LLDPE接着フィルム。破れにくく漏れにくい強度や厚薄精度などを特徴とし、主に食品包装などの用途に使用されている。
◆ユニチカ
センサー部品、封止小型成形品の成形・組立・販売および高機能合成樹脂のコンパウンド加工・販売を行う新会社「ユニチカプラスチック(タイ)」を東南部ラヨン県に設立した。今年6月から稼動に必要な整備が完了し、量産を開始した。
◆トクヤマ
マレーシアの現地子会社、トクヤマ・マレーシアは、本年2月、サラワク州サマラジュ工業団地で安全祈願祭を開催し、第2期多結晶シリコンプラントの建設を開始した。建設費は約1000億円で、生産能力は太陽電池向けに年産1万3800㌧、14年からの営業運転開始を目指す。
◆ダイセルポリマー
タイでの樹脂コンパウンド製品の販売および市場開発の一層の拡充強化のため、今年4月、現地法人ダイセルポリマー(タイランド)を設立すると発表。樹脂コンパウンド製品の製造は、これまで通り現地の日系メーカーに製造委託する。
◆ランクセス
台湾のTSRC社との合弁事業の一環として中国の南通で進めていた、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)の新工場を稼働させた。新工場には共同で5000万米ドル(出資比率各50%)を投資。
工業用品
◆ブリヂストン
中国市場での需要増に対応し、中国・広東省開平市に発泡ゴム、ウレタン、電子精密部品の製造・加工・販売会社を設立。13年下期からの生産開始を予定している。同社グループは、中長期的な需要の伸びが見込まれる中国市場における発泡ゴム、ウレタン、電子精密部品製品の供給体制を強化することで、より迅速に高品質な製品を提供する。
◆東海ゴム工業
インドネシアの樹脂ホースを製造・販売する現地子会社「PT・トーカイ・ラバー・オートホース・インドネシア(TRHI)」の工場で開所式を執り行った。敷地面積は約1400平方㍍で、建屋面積は約1100平方㍍。15年度には約900億ルピア(約9億円)の売上高を計画している。
◆東海ゴム工業
自動車用防振ゴムの金具成型に使用するプレス金型を製作・販売する合弁会社「東海津栄模具(天津)有限公司(TDJ)」の開所式を行った。中国プレス部品メーカーの天津市津栄天宇精密机械有限公司、金属部品メーカーの㈱TRIメテックスとの合弁会社。
◆豊田通商
昭和メタルおよび成都聚源鑫再生資源回収(本社=中国四川省)と合で、四川省成都市に自動車解体リサイクル会社を設立すると、今年1月に発表した。今春から工場建設に着工し、秋には完成の見込み。設立する自動車解体リサイクル工場ではELVを鉄、非鉄、部品などに分離して中国国内で販売する。
◆東洋ゴム工業
OA機器用部品のクリーニングブレードを製造、販売する新会社「トーヨーラバーケミカルプロダクツ(タイランド)リミテッド」をタイ・アユタヤ県ワンノイ市に設立した。
◆ニシヤマ
本年5月、タイ・バンコクに現地法人「ニシヤマコーポレーション(タイランド)」を設立した。工場設備品・機材をはじめメンテ関係製品、副資材の調達、据付・納入および工業用品の輸出・輸入業務を行う。