NEDOは12日、製紙用パルプに含まれる植物由来の再生可能資源で、軽量・高強度の特徴をもつセルロースナノファイバー(CNF)を樹脂中に均一分散させることで、樹脂の強度を従来の3~4倍に、熱による寸法変化を2割程度にまで抑える技術を開発したと発表した。
NEDOによると、自動車重量の約9%(約110kg)を占める樹脂部材を今回開発したCNF強化樹脂に置き換えることで、樹脂の使用量を減らすことができ、20kg程度の軽量化が可能となる。これにより自動車の燃費向上で化石資源への依存度低下に寄与することが期待される。今回の技術開発は、「グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発」の成果。
自動車では燃費の向上のため、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)といった軽量樹脂を使用することが進んでいるが、これらの樹脂は強度が低いうえ熱膨張が大きく、適用部位の拡大には限界がある。そのため、身近な紙やパルプをナノ解繊して得られるセルロースナノファイバー(CNF)を樹脂と複合化する技術の開発が進められている。CNFは、すべての植物細胞の基本物質で、地球上で最も多く存在する天然高分子で再生可能資源であり、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強度と、熱による伸び縮み(線熱膨張)がガラスの1/50と優れた特性を有するナノ繊維。表面が親水性のため、自動車用樹脂とのなじみ(相溶性)が悪く、これまで複合化が難しいとされてきた。
しかし今回、CNFと自動車用樹脂との相溶性を大幅に改善し、樹脂中にCNFを均一に分散させることを可能とする表面修飾技術(疎水化処理)を開発した。さらに、この疎水化処理をナノ解繊前の製紙用パルプに行い、溶融した樹脂と混合することで、パルプのナノファイバー化と樹脂中への均一ナノ分散を同時に達成することに成功。 開発した疎水化CNFで複合化したPPやPE、ポリアミド(PA)では、射出成形を行うと、樹脂中に均一分散したCNFにより樹脂の結晶が一方向に並ぶ(配向)。その結果、樹脂中に10~15%のCNF添加で、樹脂の強さは3~4倍にまで向上し、線熱膨張も2割程度にまで大きく抑えることに成功した。これにより自動車重量の約9%(約110kg)を占める樹脂部材をCNF強化樹脂に置き換えることで20kg程度軽量化が可能となり、自動車の燃費を向上させることが期待される。
同材料は、今後、自動車用部材にとどまらず、家電、住宅、包装・容器等に用いられる樹脂部品への幅広い展開が可能。NEDOは、自動車メーカーや機械メーカーと連携しながら生産技術の開発等に取り組んでいく方針。
今回の成果は、19日から21日まで名古屋工業大学において高分子学会が主催する「第61回高分子討論会」および10月15日に京都市にて京都大学等が主催する国際シンポジウム「Nanocellulose Summit 2012」においても発表予定。