ブリヂストン化工品事業部門
ブリヂストン
コア技術でグローバルNo・1目指す
ブリヂストンは化工品事業で進めてきた「選択と集中」に一応の目途をたて、産業資材事業、化成品・インフラ事業、フィルム・電材事業、化工品直需事業の4事業本部制とし新たなビジネスモデルの構築に取り組んでいる。国内販社も3社体制とし、集中事業にメリハリをつけ、広域にわたる営業範囲が俯瞰できる体制を整えた。望月基執行役員(化工品販売担当兼フィルム・電材事業本部長)に2012年上期の販売動向、通期の需要見通し、今後の事業戦略について聞いた。
直近(上期)の販売動向からお聞かせください
望月氏 化工品部門全体では売上高、収益ともに前年同期実績を上回り、増収増益となりました。収益は昨年からの価格改定を含め、原材料コストダウンや部材の共有化などの合理化効果が寄与し大幅増益となりました。
事業本部の販売動向は
望月氏 ベルト、ホースなどの産業資材事業は2桁以上の増収となりました。コンベヤベルトは輸出を中心に海外資源開発関連需要が大きく伸び、ゴムクローラも大幅増収、高圧ホースも前年同期比2~3割の増加と好調に推移しました。特にスチールコードコンベヤベルトの輸出は旺盛で、当社横浜工場での第3ラインの生産能力の増強を実施(2011年1月)しましたが、すでにフル操業が続いております。ベルト事業は当社の集中事業の一つであり、資源開発関連の海外での需要に対応すべく、次のステップでは海外生産拠点も視野に入れ検討を開始しています。
建機向けの油圧ホースについては、ここへきて建機メーカーの減産の影響を受け、中国市場での伸び率が鈍化していますが、予定通り当社子会社の常州普利司通流体技術有限公司で油圧ホース本体(ホース部分)の生産を10月から開始します。
化工品直需などの動向は
望月氏 自動車用防振ゴム、シートパッドなどの直需部門は自動車生産の回復で前年上期の反動もあり大幅な増収となりましたが、化成品・インフラ事業は、免震ゴムは増加したものの、プッシュロックやユニットバスなどは震災復旧需要が一段落したため前年同期実績を下回りました。4事業本部のなかで最も需要が大きくダウンしたのがフィルム・電材事業です。プリンターのOA機器ロールもOA機器の減産が響き、また、太陽電池用EVAフィルムは太陽光発電パネルの供給過剰に加え、欧州市場の冷え込みもあり、11年下期以降、調整局面を迎え、厳しい状況が続いています。当社では太陽電池用EVAフィルムは長期的には需要が増加するとみておりますが、長引く調整局面に対し、変化に柔軟に対応できる生産体制を維持していく計画です。
上期の動向を踏まえ通期の需要見通しは
望月氏 産業資材は引き続き増収を確保、化成品・インフラ事業も震災復旧から復興への動きに期待がかかるほか、免震ゴム需要の拡大で前年を上回る計画です。直需部門は第3クォーター以降の自動車生産の動向が懸念されますが、前年実績を上回る販売を計画しています。フィルム・電材事業についてはOA機器の減産、EVAフィルムの調整局面がどこまで続くか厳しい需要環境にありますが、化工品事業全体では増収増益を確保したいと思っております。
事業本部の今後の事業戦略は
望月氏 現在、活動を行っている各事業は選択と集中による事業性の評価から生まれた集中事業であり、過去からの当社コア技術であるベルト、ホース、自動車用防振ゴムは最も注力する集中事業であります。これらに加え、東日本大震災で有効性が実証された免震ゴムも集中事業の一つとしてとらえており、今後、販売体制、組織を強化し免震ゴムの普及拡大に注力してまいります。震災を通して免震構造物の有効性が実証され、生命と財産を守る免震構造物の普及促進は社会的な使命でもあります。余談ですが、歴史的建造物である約100年前に建築された東京駅が復活しましたが、この耐震補強に当社のレトロフィットによる免震ゴム352基が設置されました。
油圧ホースについては、これまでOE向けを中心に展開してきましたが、OEと補修用とのバランスを考慮し、リプレィスの事業強化を図ります。ただ右から左へモノを流すのではなく、顧客の困りごとを解決するソリューションプロバイダーとしてのビジネスモデルを構築していく計画です。
化工品事業の長期ビジョンについて
望月氏 2007年から選択と集中に取り組んできましたが、これまでの化工品事業は多くの品種が個別に存在している状況でした。強い事業の集合体でありたいという思いから、集中事業の中のコア技術を有する基幹商品では2016年までにグローバルNO.1を射程に入れることを目標としております。
この目標の達成のためには「チームワーク」「ボトムアップ」「当事者意識」が不可欠であり、需要環境の変化に対応する柔軟性も必要となります。国内販売については当社は2010年1月から販社を再編し3社体制とし、集中事業へのリソース(資金、人的資源)の配分を重点的に目に見える形で実行してきましたが、事業環境の変化のスピードに対応して、 さらなるリソースの最適配置に取り組んでいます。