米グローバルタイヤニュース電子版 米国での中国製タイヤへかけられたセーフガード措置が9月26日に終了したが、セーフガード措置終了後の米国でのタイヤ価格の影響やセーフガード実施の評価などをまとめた記事を掲載。
9月26日が米国での中国製タイヤへかけられたセーフガード措置の公式の終了日だった。関税は通商法第421条に基づき、全米鉄鋼労働組合(USW)による申立ての後に徴収される。
セーフガード終了に伴い、中国のタイヤ工場が需要に応えるため準備を進めているという報告、米国のタイヤ価格が近い将来急激に下降するだろうという推測が業界アナリストに蔓延している。一方、タイヤメーカーや代理店は、これまで関税終了に備えてきたと述べている。
初年度には中国製の乗用車、ライトトラック用タイヤにかけられた関税は初年度には39%、2年目には34%、三年後には29%と下落し、9月26日に税率は一般的な値である4%に戻った。
オバマ大統領が期限間際にセーフガード期間を延長するのではないかという推測があり、USWからの要求は延長の意見が多かったが、同組合は当該請求をすることはないと断言した。
USW委員長のレオ・W・ジェラルド氏は、同組合は米国の中国への賠償金の支払い可能性が判明した後に延長を請求しないことに決めたと語った。ジェラルド氏は、米国のタイヤメーカーや労働者に好影響があったとしてセーフガード措置を賞賛している。
「この決断であらゆる意味で成功が達成されました。雇用は維持され、あるいは新たに作り出され、生産は持ち直し、工場設備が製造され、多くの企業が黒字転換しました。法律のおかげです」と語った。
一方、セーフガードの好影響は疑わしいとする情報もある。BB&T資本市場が9月26日に発行した報告書によると、関税のために米国のタイヤ価格は10~15%上昇した。これは原材料コストが約10~20%ほど高くなるため。
セーフガード措置に反対の立場をとっていたタイヤ産業協会(TIA)の執行副社長、ロイ・リトルフィールド氏は「高い関税が導入されてもタイヤの輸入量が落ちることはありませんでした。中国の代わりに、タイヤは韓国、インドネシア、タイから輸入されていました」と語っている。
また、関税がTIA加盟企業内の雇用に与えた影響は計算不可能だが、「しかし、セーフガード措置は確かに代理店、輸入業者、購入グループやディーラーにも影響を与えた」ともコメントした。
BB&Tレポートは2012年第4四半期のはじめには、10から20パーセントのタイヤ価格の下落が期待できるとしている。
リトルフィールド氏によれば、セーフガードの期間中にもいくつかの企業が中国製タイヤの輸入を続け、製品を備蓄していたという。「まだ情勢を見ていく必要がありますが、おそらく市場では非常に競争力のある価格で中国製タイヤが出回るでしょう」としている。
中国製タイヤを輸入停止しなかった会社として、テネシー州メンフィスのプライベートブランド企業、Del‐NATタイヤ社がある。「セーフガードが終了することで、様々なクラスのタイヤをより安く購入することが可能になります。今までエントリーレベルの製品に高い代金を払ってきましたが、もうその必要はありません」と同社のジム・メイフィールド社長は述べている。
Del‐NAT社はセーフガード期間終了後、中国からより多くのタイヤを購入する方針だが、国内でも以前と同じだけの量のタイヤを購入し続けるだろう、とメイフィールド氏は言った。
ニュージャージー州ユニオンのタイヤの輸入会社、フォーリンタイヤセールス社(FTS社)の社長リチャード・カスキン氏によると、セーフガードの期間は非常に厳しい時代であったという。
「我が社の乗用車と商用タイヤの供給元は中国からだけでした」とカスキン氏は述べている。FTS社は経費節減でその期間を耐えたとしている。
カスキン氏によると、中国以外のアジア諸国のタイヤメーカーは、韓国を例外として今回の措置終了に非常に大きな影響を受けるという。「韓国は大規模な工場を持っていますが、その設備は、中国ほど近代的ではない」と彼は言った。
米国内のタイヤメーカーでは、グッドイヤーはセーフガード措置による影響は軽微だったと述べた。「我々は、北米で販売するタイヤの大半は北米で作っていく」とグッドイヤーの広報担当者は述べた。
ブリヂストンアメリカも平静に終了を受け入れ、ブリヂストン広報担当者は述べた。
「我々は3年間備えてきました。我が社は適切な調整を行っています。私たちの今すべきことは、市場を見て、必要に応じた対応を取ることです」
一方、トライアングルグループ、山東リンロンゴム社、山東サイレンタイヤ社を含めた山東省のタイヤメーカーは、米国市場向けのタイヤ製造準備を始めている。