JSRの2013年3月期上期連結決算は売上高が1825億7400万円、前年同期比7・2%増、営業利益170億5700万円、同12・4%減の増収減益となった。
売上高はエラストマ―(合成ゴム)、合成樹脂の販売量増加により石化事業全体で前年同期比11%増と伸びたほか、多角化事業がFPD材料が落ち込んだもののアートンなどの戦略事業が拡大し、前年同期比1%増とほぼ前年同期並みを維持したことで総売上高は前年同期比7%の増収となったもの。エラストマーの売上高は前年同期に比べ約100億円の増収となったが、「前年同期は震災の影響で鹿島工場が5月末まで生産を停止しており出荷できずに減収、自動車生産も減産を余儀なくされ、それによる需要減があったが、今期はその影響がなくなり増収となった。 一方、自動車生産は回復したが、タイヤの需要が月を追うごとに冷え込んできた」(平野勇人執行役員)としている。
汎用合成ゴムは国内の輸出用市販用タイヤの生産が低調に推移したため販売数量は前年同期実績を下回ったが、主要原材料価格の上昇に対応した価格改定により、売上高は前年同期並みをキープ。NBR,EPDMなどの機能性特殊ゴムは国内自動車生産の回復で販売数量、売上高とも前年同期を上回った。輸出は低燃費タイヤ向けのSーSBRが大きく増加したほか、機能性ゴムも前年同期の震災影響から回復し、販売数量、売上高ともに前年同期を上回った。
増収ながら減益となったのは「今上期に鹿島工場、四日市工場の本定修による修繕費用が嵩んだほか、需要減を反映した売値ダウンが響いた。また、人件費の上昇や新規製品の拡充投資費用が増加し、売上原価率が前年同期に比べ2ポイント上昇し減益となった」(同)。経常利益は営業外収益で持ち分法の投資損益が韓国子会社、錦湖ポリケムの増収増益で収益改善され、営業利益に比べマイナス幅が縮小している。多角化事業は半導体市場が、スマートフォンや多機能携帯端末などの需要が拡大したものの、パソコン向けのDRAM需要が低迷し、同社の半導体材料の売上高は前年度同期並みにとどまった。フラットパネル・ディスプレイの生産については、2012年度第2四半期は主要パネルメーカーの稼働率に回復傾向が見られるが、低い伸びにとどまったとしている。
通期業績予想を下方修正
通期業績見通しは連結売上高は4050億円から3780億円(前年比8・0%増)、営業利益は420億円から360億円(同0・1%増)、当期利益は290億円から280億円(同6・0%増)へと下方修正した。下期のナフサ価格はは1キロ5万2000円(前年同期は5万2900円)、為替は1ドル78円(同78・35円)を前提としている。 エラストマー部門の通期売上高は2000億円を予想しており、下期は上期に比べ80億円のプラス予想。「自動車生産も5~10%程度落ちるとみており、タイヤ生産もそんな大きな回復はないとみている。タイヤの需要が今、落ちているのは補修用タイヤの需要で、補修用タイヤの需要がなくなったわけではなく先延ばしをするということでこの下期後半で上向くとみている。また、この上期も需要が落ち込む中、エコタイヤ用のソリューションSBRは数量ベースで2割強も伸びており、このSーSBRの伸びは下期も続くとみている」。