高機能シートの開発で市場開拓を積極推進
国内は復興関連需要に期待 8月累計生産は2ケタ増を維持
「夏以降、需要に陰りが見え、ゴムシート需要は増大基調から横ばい、やや下落基調に転じている」-ゴムシート各社の営業担当者は国内需要についてこう語る。
エコカー補助金制度などにより、本年年初から自動車生産台数は順調に推移、土木建築分野も東日本大震災の復興需要を背景に大きな伸びはないものの堅調に推移していたが、秋口に入り、シート需要をけん引していた自動車関連部品用途が低迷していることが影響している。
日本ゴム工業会・ゴム板部会がまとめた本年8月のゴム板の生産・出荷実績によると 、生産量は1563㌧、前年同月比11・5%増、出荷量は1521㌧、同16・7%増と好調を維持した。
生産の内訳は、プレス製品が1548㌧、同11・6%増、その他15㌧、同横ばいで、 出荷内訳はプレス製品が1491㌧、同16・2%増、その他30㌧、同50・0%増となった。この結果、本年1―8月累計では、生産量が1万3141㌧、前年同期比1・7% 増、出荷量は1万3267㌧、同7・8%増となった。しかし、9月以降の需要動向は一転して悪化、厳しい数値になることが予想される。
シートメーカー各社は、国内市場の大きな伸びは難しいと認識、特殊品による新製品開発による市場拡大に努めている。永年培ってきたゴム配合技術をさらに磨き、ユーザーが求める機能を有したゴム材料をベースに製品開発を進めている。
内需で期待されるのは復興関連需要だ。「国内の市場動向をみると、震災復興需要は着実に出てくると思われるが、中長期的なものだろう。住宅や公共投資関連、鉄道など様々な需要が派生し、真に求められる製品の安定供給が求められるだろう」(シ ートメーカー)。
環境対応商品の開発に注力
ゴムシート各社の今後の製品開発は「環境対応は避けて通れない。組み付けパーツとして輸出されている製品も多く、RoHS、REACH規制への対応が不可欠」(メーカー)と指摘する。国内マーケットに関してもシリコーンゴムやフッ素ゴムなど高機能ゴムを材料とした付加価値商品の開発を各社とも積極展開、ユーザーとの共同開発が進められている。
自動車や家電などゴム産業の大手需要業界は新興国での生産を拡大させているが、部品としてのゴムシート需要も部品組み付けや商社経由で海外に輸出されており、ゴムシートメーカーも海外需要への対応を真剣に考えている。将来的には機能部品としてのゴムシートの海外生産が開始されることも十分予想される。
シート各社の最新動向を探ってみた。
〈十川ゴム〉
新商品開発の取り組み方針は「その最終製品のみならず、製造工程にまで常に環境に配慮した研究開発に取り組んでいる。環境対応ラバーシートCPL-100Eは、REACHおよびRoHSともに対応済みで、既に在庫販売している。今後は、その他の素材についても展開の幅を広げていきたい」とする。
〈タイガースポリマー〉
放熱シートなど機能商品群の販売に注力。開発面においては、ユーザーが求める特性を発揮させるための配合技術の研究を進めており、新たな市場を目指した新商品開発を加速させる方針。
〈入間川ゴム〉
ゴム商社経由で中国、台湾、欧州など海外の鉄道車両向けシートの拡販に注力する。12年度の下期から13年度にかけて需要が出てくるものと期待している。また、同社は今夏、新商品開発PT(プロジェクト・チーム)を設置した。
〈クレハエラストマー〉
震災復興対策に貢献する製品群のカタログ「復興関連製品のご紹介」を作成した。耐摩耗性ゴムシートや「VBRAN」、橋梁用ゴム緩衝材、さらにガレキ処理で効果を発揮する耐磨耗製品を拡販する。また、同社は広幅シートの本格事業展開に乗り出した。
〈日東化工〉
新商品開発では放射線遮へい効果に優れたゴム材料の開発に成功した。環境負荷の大きい鉛化合物ではなく、環境性に優れた高比重の金属化合物を使用した。柔軟性に優れ、ゴムシートを重ねて使用することで放射線遮へい効果を高めることが可能。
(2012年11月12日紙面掲載)