炭酸カルシウムの総合メーカーとして発展を遂げている丸尾カルシウム㈱。同社の創業は大正15(1926)年で、創業以来、塗料用をはじめ各種用途の製品を製造販売してきた。昨年度は自動車タイヤ向けシリカの輸入販売も開始、新たな成長路線を目指す。そこで同社の今井一史専務取締役(社長補佐兼最高財務責任者兼コンプアライアンス・関係会社担当兼アジア事業部・中国事業統括部管掌)に同社の現状と今後の事業展開などについて話を聞いた。
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炭酸カルシウムの原料は石灰岩。日本にある石灰岩のうち、地下の圧力や火山のマグマによる熱など、長い年月を経て結晶化が進んだものが原料として適する。結晶が肉眼でも見える石灰岩は、粉砕または分級で細粒子に変え、重質炭酸カルシウムとなる。結晶が緻密で灰色の石灰岩は生石灰と二酸化炭素に熱分解したあと精製、化学反応により細かい炭酸カルシウム粒子に合成して軽質炭酸カルシウムやコロイド炭酸カルシウムとなる。
同社は、粒子の大きさや形状のコントロール技術、表面処理技術、さらに粉砕技術など各種技術開発を積極的に行い、ニーズを先取りして用途拡大を進め、品質向上に努めてきた。
今井専務は「未知に挑戦して困難に立ち向かい、将来を切り拓いていく研究姿勢でこれまで事業展開してきた。炭酸カルシウムを母体に、各種無機粉体の基礎研究から応用研究まで幅広く取り組み、グローバルなニッチ市場を開拓していく」と話す。
同社の販売先は多岐にわたるが、工業用ゴム・合成樹脂分野が約47%と半数近くを占める。この中には建築用シーラントや接着剤向けなどを含む。
2012年度の業績推移については、原材料・燃料価格の変動による影響が予想以下だったことや大飯原子力発電所稼動により計画停電対策も緩和され、中間期連結業績で売上高45億5600万円、営業利益1億1400万円、経常利益1億5100万円、中間純利益7800万円となり、それを踏まえ、通期の利益予想額を上方修正した。
通期の連結業績予想は、売上高95億円、営業利益は3000万円増額の2億円、経常利益は5000万円増額の2億5000万円、純利益は3000万円増額の1億4000万円とした。
炭酸カルシウムの生産体制は本社工場のほか土山(兵庫県)、土浦(茨城県)に生産拠点を有し、生産能力は世界トップクラスを誇る。「現在は合理的な生産システムによるコストダウンを図り、多品種少量生産システムを構築してハイレベルな品質管理を行っている」(今井専務)。
営業体制は、東京・名古屋・大阪の大都市圏に営業所を設置し、地域に密着したきめ細かなサービスを実施している。「東京と大阪の消費地には配送・物流センターを設置して、信頼のネットワーク体制を整えている。炭酸カルシウムのほか、タルクやクレー、けい石粉、シリカなど原料販売も行っており、顧客の幅広い要望に応えている」(今井専務)。