第2回 上 免震は人類を救えるか 世界の地震国への貢献
「日本で鍛えられた免震技術を普及させ、ひとりでも多くの人々を地震の恐怖から解き放ちたい」。前回、それには“免震の投資効果”をきちんと伝える「供給者側の自助努力がまだ不足」、という考えを述べた。
今回は世界に目を向ける。
地球上至るところに地震のリスクがある。弧状列島などプレート境界近傍が顕著であるが、プレート内活断層も直下型大地震のリスクが高い。まだ記憶に新しい08年5月、最大級(M7・9*)のプレート内地震といわれる四川大地震では、死者、行方不明者が9万人を超えた。
悲惨なことに、その約2割が校舎の崩壊による生徒、教師であったという。震源地付近では全人口の8割近くが犠牲になった町もあった。プレート境界型では、04年末のスマトラ島沖地震(M9・1)が巨大津波を引き起こし、スマトラだけでなくタイやインド、スリランカ、アフリカ東岸などインド洋沿岸諸国で死者22万人を超える大災害となった。
と書いている矢先の今月12日、カリブ海のハイチでM7・0の浅い地震が発生、死者5万人との速報。休むことのない地殻変動、毎年世界のどこかで地震災害は起きている。特に開発途上国では、煉瓦積みや低強度の住居で圧潰のリスクが高く、甚大な人的被害に直結している。四川省の学校では耐震基準の甘さだけでなく、手抜き工事による被害拡大も報道されている。
地震は、突発的に地域全体が襲われるところが恐ろしく、その影響は政治経済にも深く長く及ぶ。津波被害は更に広範で、揺れを感じないのに襲来する怖さがあるが、発生から襲来にタイムラグがあるので、対処の知識と情報提供によって減災が可能である。
古老の言い伝えだけでなく、スマトラ津波で得られた貴重な映像情報を活用した啓発活動と、沿岸各国の情報伝達インフラ整備で「免災」を目指すべきである。 (つづく)
(2010年2月8日掲載)