第4回 下 「さらに進めたい、地震防災で国際的貢献」
シンポジウムでは、今年度建築研究所と政策研究大学院大学が行った、インド、インドネシア、トルコ、ネパール、パキスタン、ペルーの大学や研究機関との、各国のノンエンジニアド住宅の実態を把握する共同研究の成果、および本問題に対する日本の貢献の実績と今後について議論された。
途上国においては60%~90%の住宅が、主な材料、補強部材、補強部材の接合などに強度上の問題を抱えるノンエンジニアド住宅である。国や地域でその内容も様々に変化するが、耐震強度の基準が不備、あるいはそれらを守る意識が足りないなどの問題が浮き彫りになった。より確実な補強構造を普及させること、職人に強度を確保する意識とノウハウを持たせること、住民が身の安全のための(わずかな)コストアップを受容する意識改革などが今後の課題である。これらを進めるには、やはり当事国の政府が真剣に国民の安全を守る取り組みを進めなければならない。
日本は耐震技術先進国として、技術、資金に加え、啓蒙活動への支援で大いに貢献できる。
自分の不勉強を恥じるが、今回のシンポジウムで建築研究所国際地震工学センターが行ってきた「国際地震工学研修」のことを初めて知った。 この研修は今年50周年を迎え、これまで96カ国1,424名の修了生を輩出してきた。50年の蓄積は正に偉業。千人を超える修了生が、世界中で地震防災に力を発揮していくことは本当に心強い。
今年11月に横浜でAPEC首脳会議が開催されるが、直前のG20とどうやって差をつけるかが悩みらしい。アジア太平洋地域はまさに地震ハイリスク地域でもあるのだから、耐震安全性向上のための国際協力を議題に加えてはどうか?日本は確実にこの分野でリーダーシップを持てるし、そうすべきだ。「いのちをまもりたい」首相にもぴったりである。是非このチャンスに、地震防災における日本のプレゼンスを全世界にアピールし、人類を地震災害から守る大発展の力としたいところだ。
(2010年4月5日掲載)