親族に対しての事業承継勘定編
前回は感情(Emotion)について書きましたが、勿論精神論だけでは事業承継は出来ません。今回は、勘定(Accounting)の事業承継のについて書いて参りたいと思います。
まず、経営者は事業承継者と一緒に、自分の会社の将来を中・長期的にどのように持っていくかを話し合い、文章で纏めて下さい。
それにより、事業承継者は現在の経営者の考え方や自分なりの考え方が、鮮明により具体的になって参ります。
次に、経営者は短期(1年間)中期(3年間)の会社の資金繰表を作成して下さい。この資金繰表については後々承継者が経営を引継ぐ時に一番重要なポイントとなります。
そして、半年ほどかけて経営者が事業承継者に日々の資金繰りをたたき込み、半年後には事業承継者が一人で資金繰りが出来、経営者は資金繰りの全てを任せる様にして下さい。
その後は、予実表(予算と実績の対比の表)を作成して、毎月実行結果と資金繰表を見比べます。そして必ず月一回取締役会を開き、予実表に基づき何が変わったのかの話合いをして下さい。これを行う事で事業経営者は会社が現在どの様な状況に有るかを把握する事が出来、そして、スムーズに事業の引継ぎを行う事が出来ます。そして経営者は事業承継者を金融機関に一緒に出向き、次期経営者として紹介し、日々の資金繰りは次期経営者に任せるとの意向を表明して頂きたいと思います。この事により経営の自覚が生まれます。
次に、会社の財務状況を事業承継者に開示して下さい。財務に関してはすぐに次期社長に全てを任せるのには難しいと思いますので、初めは経営者主体で1〜2年間ほど掛けて一緒に財務状況の分析等を行ってください。これらの事を行い経営者はまず資金の件からなるべく早く手を引く事を勧めます。そのため事業承継者には良きアドバイザーが必要になり、有能な経理担当者を育てる必要がありますが、もし見つからなければ有能な会計事務所と契約すべきであります。
次に大事なのは、自社株の問題です。これは、時間を掛けて事業承継者に徐々に移していく必要があります。方法としては贈与や売却などありますが、なるべく税金の掛からないように移していくことがポイントです。そして、自社株を移すあたり、なるべく低い価格で移す事が重要です(自社株を下げる方法はまた別なテーマとして取り上げて行きたいと思います)。
これらの事を行い、落ち着いてきたら次に取引先に継承者を紹介し、その後経営者は徐々に勘定以外の業務を継承者に任せていき、事業を引き継がせてください。
最後に経営者は資金繰り等の具体的な実務部分の教育を行い、そして承継者の良いところや、やる気を引き出し、承継者の考えを尊重しながら感情と勘定の両方を踏まえて事業承継を行ってください。よく「会社の寿命は30年」と言われますが、その原因は全く同じ様な事業を続けるからです。時代にあった経営方法を少しずつでも改革して行けば会社は何年でも続くことが出来ます。先ずはその第一歩として、しっかりとした事業承継を行ってください。