産業技術総合研究所は9日、日本電気、宮崎大学と共同で、微細藻の一種であるミドリムシから抽出される成分を主原料とした微細藻バイオプラスチックの開発に成功したと発表した。
この微細藻バイオプラスチックは、ミドリムシ(ユーグレナ)が作り出す多糖類(パラミロン)に、同じくミドリムシ由来の油脂成分(ワックスエステル)から得られる長鎖脂肪酸またはカシューナッツ穀由来の油脂成分で柔軟性を持つ長い鎖状部位と剛直な六角形状部位を併せ持つカルダノールを付加して合成され、熱可塑性と耐熱性に優れ、植物由来成分率が約70%と高いのが特徴。 本研究は、独立行政法人 科学技術振興機構(JST)の先端的低炭素化技術開発の一環として行われた。
一般に水中で光合成する微細藻類は、陸上植物よりも太陽エネルギー利用効率が高く、特にミドリムシは高濃度の二酸化炭素を直接利用でき、高い光利用効率の実現が可能である。このようなことからバイオプラスチック原料の供給源として選択した。 さらにミドリムシは、食品工場などの安全な廃液を用いた培養が可能であるため、結果的にプラスチック製造にかかるエネルギーの削減につながりうると期待されている。
作成した微細藻バイオプラスチックについて各種物性測定を行ったところ、衝撃強度などについては改善の余地があるものの、熱可塑性については、従来のバイオプラスチック(ポリ乳酸やナイロン11)や可塑剤を添加した酢酸セルロース、石油由来のABS樹脂と同等レベルであった。また耐熱性については、これらのプラスチックよりも優れていることがわかった。
今後は、微細藻バイオプラスチックの部制と構造の詳細な関係を明らかにし、さらに高い耐熱性や強度などの優れた実用特性を目指して分子設計を推し進めていく計画である。また、ミドリムシの効率的な培養方法やパラミロンの抽出方法など、微細藻バイオプラスチック製造に欠かせない技術についても研究を行う。
2013年01月10日