三菱樹脂は16日、同社のピッチ系炭素繊維「ダイアリード®」の次期主力グレードとして、新グレード「ダイアリード® K13312」を開発し、1月中旬より本格販売を開始すると発表した。
炭素繊維には、ポリアクリロニトリル(PAN)系とピッチ系の2種類があるが、ピッチ系炭素繊維は優れた引張弾性率(剛性)や熱伝導性、熱膨張率がほぼゼロのCFRP(炭素繊維複合材)を生産できるなどの特徴を有し、産業用カーボンロールや各種製造装置部材、自動車部材、コンクリート構造物の補強用炭素繊維シートなど国内外を問わず広範な用途で採用されている。一方で、剛性が優れるがゆえに2次加工時のハンドリングが難しいことが市場拡大においての課題でもあった。
今般発売する新製品「ダイアリード® K13312」は、社会インフラの老朽化に対応するべく今後の需要拡大が期待されるコンクリート構造物の補強用炭素繊維シート向けに開発されたグレード。ピッチ系炭素繊維の過去25年間の技術の蓄積を活かし、原料液晶ピッチ制御を始めとした全製造プロセスの最適化を図ることにより、優れた引張弾性率(420ギガパスカル)はそのままに、同社従来品比で約20%強度を向上させ、補強用炭素繊維シートに求められる引張強度3200MPaを実現した。大規模な補強工事が進む首都高速道路にも既に採用が決定しており、老朽化した橋や建物の補強用としてさらに市場が拡大するものと期待される。また、強度の向上に加えて、顧客側での二次加工性(ハンドリング性)も大きく改善。さらに繊維に結び目を作り、引っ張った場合の破断強度(ノット強度)も2kgから11Kgへと約5倍に向上させているため、顧客側での加工時にも糸切れすることなく加工速度を上げることが可能。ハンドリング性の向上により、補強用炭素繊維シートだけではなく、エネルギー分野やスポーツ分野での採用も期待される。
補強用炭素繊維シートとしての一部ユーザーへの先行販売に加え、秋から実施しているサンプル評価においての高い評価を受け、本格販売を開始した。同社は強度とハンドリング性を向上させた同製品を、ピッチ系炭素繊維「ダイアリード®」における主力製品と位置づけ、補強用炭素繊維シートを製造販売するグループ会社の三菱樹脂インフラテックとも連携し、本製品の拡販を進める方針。
〈新グレード「ダイアリード® K13312」の基本物性データ〉
▽引張弾性率=420GPa
▽引張強度=3200MPa
▽フィラメント数:12K(1万2千本)
2013年01月17日