本紙は新年特集号の恒例企画として「景況調査と業績予想」と題してアンケート調査を実施いたしました。ご協力をいただきました原材料メーカー、製造メーカー、ゴム商社の各位に感謝申し上げます。昨年は、国内では東日本大震災からの復興を目指した1年でありましたが、ガレキ処理が進まない地域も見受けられ、本格復興と呼べるのは本年以降となりそうです。調査時(12年12月)の景況感は「緩やかに下降している」が57%と過半数で、「悪化している」(25%)を加えると8割強が「景気低迷」の回答となっております。厳しい経済環境の持続は予想されますが、年末の総選挙により政権交代が行われ、株価上昇、円高の是正など市場からの期待感が表れてきております。昨年上期の順調推移を背景に上場企業の9月中間連結決算は押し並べて増収増益傾向を示しましたが、通期の連結業績予想は需要の減速感から下方修正を発表した企業も目立ちました。ここでは、アンケート結果を分析、13年のゴム産業界の動向と企業業績を探ってみました。
〈景気動向〉
昨年の景気動向は、上期は国内新車販売がエコカーポイントの補助金などにより順調に伸び、自動車生産も好調に推移したが、長引く欧州経済の低迷が世界経済の牽引でもあった中国に波及、加えて日本とは領土問題を端に関係が悪化、日本製品の不買運動などにもつながり、景況は一気に悪化した。
こうした状況下でのアンケート調査となり、景況感は「緩やかに下降している」が57%過半数を占め、「悪化している」も25%の回答率となり、悪化項目合計は8割を超える結果となった。3月期決算企業の企業業績は、昨年11月以降相次ぎ発表された中間期は比較的好調を維持したものの、需要の急速な減退感から通期連結業績を下方修正した企業も目立った。
景気動向の判断理由(重複回答)については「企業収益の動向を見て」がトップで68%、次いで「設備投資の動向」が54%、「個人消費の動向」43%、「公共投資の波及効果」と「輸出の状況」がともに18%などとなっている。
民間調査機関の予測では、13年度後半は消費税率の引き上げを控えて耐久財消費や住宅投資が増加し、景気を押し上げる可能性が強いとする見込み。自民党政権が打ち出した経済対策の実効による国内市場の成長にも期待されるとしている。一方で、消費税率引き上げに伴う反動減も予測されるとしており、ここ1~2年内の内需の回復力は脆弱にとどまる予測。
海外景気については、米国経済の回復、欧州経済の落ち着き、中国市場の回復など堅調推移が見込まれ、円高是正が追い風となり輸出の増勢が続く見通し。
今後、国内景気動向を左右する判断材料(重複回答)は、前年の調査と比べて大きな違いはみられず「アジア・中国の景気動向」がトップでほとんどの企業が指摘した。このほか「企業収益の動向」が50%、「設備投資動向」が43%、「為替動向」並びに「政局の動向」がともに39%、「公共投資の効果」29%、「個人消費の動向」および「米国の景気動向」がともに21%などとなった。
13年度に期待される需要業界に対する回答は、ゴム製品の最大の需要先である自動車が58%でトップ。以下「医療・衛生用品」が42%、「機械設備」29%、「住宅」17%、「情報通信」13%、「土木建築」と「半導体」がともに8%、「電気・電子」と「事務機器」がともに4%などとなった。
内需型の需要分野は特殊技術を武器に高付加価値製品の需要が伸びると予測され、汎用部品など大量製品はアジア・中国など海外需要での伸びが期待されている。
〈業績予想〉
主要上場ゴム企業の3月期中間連結決算は、総じて売上高は増収を確保したものの、収益面は増益企業、減益企業がほぼ半数と明暗を分けた格好。欧州市場の低迷や中国市場などの夏以降の減速などが影響し、通期の連結業績予想は下方修正した企業も多く、先行き不透明感が強まっている。
「増収」企業の主要因(重複回答)では「内需の拡大」が最も多く63%と過半数の企業が指摘した。このほか「新事業・製品が貢献」「価格改定」「体制・戦略の強化」の3項目がいずれも25%で、「為替」が13%の結果となった。
一方「減収」企業の要因としては「内需の不振」がトップ。次いで「輸出の不振」57%、「為替差損」14%。
12年も原油価格高騰からゴム原材料価格の値上げが行われ、ゴム製品の価格改定も実施されたが、その材料高への対応では価格修正を「実施した」が20%、「実施していない」80%の回答で、自社でのコスト吸収努力が続けられた模様。材料価格のアップも収益悪化につながった大きな要因と考えられる。
さらに、震災を機に工場や研究所、本社・営業所ビルなど建物の耐震強化策や電力問題からプラントでの自家発電設備の導入など、エネルギーコストも大幅に上昇した。こうした費用の増加も売上高原価および販管費上昇を招き、収益悪化を招いた要因と考えられる。
12年度下期の需要分野の動向については「好調分野」「不調分野」について、それぞれ回答を求めたが、各分野とも好調、不振と別れた結果となった。自動車などは売れ筋車種への納入実績などで差が出たものと思われる。技術革新が進む電気・電子、IT産業なども付加価値の高い部品採用が受注の決め手になりつつあり、業種間においても格差がみられている。
13年度上期(4―9月)のゴム業界の景気動向に関するアンケート結果は、新政権の誕生で年初は明るいムードがみられたものの回復実感を得たわけではなく、昨年下期の景況感から脱出することは難しいと判断され「緩やかに下降」がトップで40%、「悪化する」が36%となっており、引き続き厳しい経営環境が見込まれる。「変化なし」(8%)と「明るい兆しが見える」(10%)の2項で2割近くを占めており、新年度下期以降の本格回復に期待がかかる。
ゴム企業の工場進出が多く、生産拡大が今後も予想される中国市場については、日本と中国の領土問題を機に関係が悪化、加えて中国市場の景気低迷もあり、厳しい対応が予想されるが「影響の有無」に対する回答は「影響を受けていない」が54%、「影響を受けている」46%となった。ただ、影響の度合いは長引くことはないとの見方が大勢。
13年度は、国内では震災復興需要、海外では新興国など成長市場での生産拡大並びに販売増が重要な戦略と言えそうだ。
*紙面ではグラフ表を多数掲載