宇部興産は5日、堺工場におけるカプロラクタムの生産を平成26年3月末に停止すると発表した。これに伴い平成25年3月期において126億円の特別損失を計上する。
同社は昭和30年に、繊維や樹脂用途として幅広く利用されるナイロンの原料である、カプロラクタムの製造・販売を開始し、品質の高さと安定供給力に対する顧客からの高い評価をもとに事業を拡大し、宇部、堺、スペイン、タイの4工場によるグローバルな供給体制を築いてきたが、中国を中心として新規メーカーの参入や既存メーカーの増設が相次いだことで、カプロラクタム市況は大きく崩れ、一方で原料となるベンゼンや副原料などの価格高騰もあり、カプロラクタム事業の採算は急速に悪化した。
宇部興産の製造拠点のなかでも堺工場のカプロラクタム製造設備は、製法や、LNGに依存する副原料・スチーム等のユーティリティにおいて、他の3工場と比べて製造コストが高く競争力に劣るため、かねてよりさまざまな収益改善策を検討、実施してきた。
しかしながら、昨今の事業環境の変化はこれら改善策によって対応可能なレベルを超え、将来にわたって採算改善が見込みがたい状況であることから、同設備については一定期間の操業後に停止し設備廃棄することが、事業全体の競争力強化のためには最善との判断に至った。また、同設備停止に伴い、関連する同工場内の誘導品等の製造設備も合わせて停止し、廃棄する。今後、堺工場はリチウムイオン電池用の材料など、付加価値の高い機能材を中心とする生産拠点として強化を図る。
なお、停止予定の設備で生産している各製品は、他の当社製造拠点から供給するほか、顧客の皆様の代替調達先確保に最大限の協力を行うとしている。
また、従業員の雇用は、堺工場で今後生産拡大を予定しているリチウムイオン電池用セパレーターをはじめとする機能材分野への配転などにより確保する。
〈停止・廃棄設備の概要〉
対象設備および生産能力
▽カプロラクタム=10万㌧/年
▽アンモニア=20万㌧/年
▽液化炭酸=9万9000㌧/年
▽硫安=16万㌧/年
▽1,6ヘキサンジオール=5000㌧/年
▽停止予定日=平成26年3月末