東レは25日、再生可能化学品プロセス技術のリーディング企業であるGenomatica社(ジェノマティカ)と共同で、Genomatica社のバイオプロセス技術によって製造された1,4―ブタンジオール(バイオBDO)を用いた部分バイオマス原料由来ポリブチレンテレフタレート(部分バイオPBT)のベンチレベル(中規模設備)での重合に成功したと発表した。
ベンチレベルでの重合に成功したことで、部分バイオPBTの商業規模での量産に目処がたつようになったとしている。また、従来の石油由来のPBTと同等の物性と成形性を有していることを確認しており、成形品の試作にも成功している。
同社は、本年度から顧客へ部分バイオPBTのプレマーケティングを実施し、サンプル提供を開始する計画。その結果を踏まえ、Genomatica社のバイオBDO製法のライセンスを受けた製造者の供給体制が整い次第、部分バイオPBTの上市を検討する考え。
Genomatica社は、独自に遺伝子を組み替えた微生物を用いてバイオBDOを製造するプロセスを開発しており、2012年11月には、商業規模のプラントを稼動させ、約2千トンのバイオBDOの生産に成功している。
一方、東レは、1976年に現在主流となっているテレフタル酸とブタンジオールを原料として用いる直接重合法によるPBTの工業化に世界で初めて成功し、長年にわたり培ってきたPBTの重合に関する知見を有している。この知見をいかしGenomatica社のバイオBDOを使用して部分バイオPBTの重合に成功し、2011年2月に部分バイオPBTの初のペレット化に成功している。
PBTは、テレフタル酸とブタンジオールを重合することで製造されるエンジニアリングプラスチック。引張強度や引張弾性率などの機械的特性や耐熱性などの物性のバランスがよいため、スイッチ、イグニッションコイルなどの自動車部品やコネクタ、プラグなどの電気部品などに幅広く利用され、世界で年間70万トンが使われている。現在、一般的なPBT樹脂は、石油を原料とするブタンジオールと、同じく石油由来のテレフタル酸を重合して製造されている。石油の長期安定供給、石油価格の高騰や二酸化炭素排出増加の問題がある中、エンジニアリングプラスチックを再生可能なバイオマス由来原料から製造することは重要な課題。東レは、同課題の解決に対して高分子化学、有機合成化学、バイオテクノロジーといったコア技術を融合させることで、精力的に取り組んでいる。
同社は、「全ての事業戦略の軸足を地球環境におき、持続可能な低炭素社会の実現に向けて貢献していく」という経営方針のもと、バイオマス由来ポリマーの研究・開発およびバイオマス由来材料事業の拡大を推進している。既に、完全バイオPETの重合及び繊維化、フィルム化に成功し、また、バイオベースナイロンの開発にも取り組んでいる。バイオマス由来ポリマーの拡大は中期経営課題「プロジェクト AP-G 2013」で掲げる「グリーンイノベーション事業拡大(GR)プロジェクト」においても、その中核を成す重要な取り組みだ。同社は今後も、コーポレートスローガン「Innovation by Chemistry」のもと、持続可能な循環型社会の発展に向け、「ケミストリーの力」を駆使して新しい先端材料の研究・開発に注力していくとしている。
2013年04月26日