トヨタ自動車が8日、発表した2013年3月期の連結決算は、売上高が19%増の22兆641億円、営業利益は3・7倍の1兆3208億円の増収増益となった。北米やアジアでの販売が好調に推移、円高修正による輸出採算の改善も寄与した。 決算発表席上で豊田章男社長は次の通りあいさつした。
2013年3月期は、北米、アジアなどの地域における販売台数の増加やグループ一丸となって取り組んだ収益改善により、1兆3,208億円の営業利益となりました。また、単独決算につきましては、2008年3月期以来、5年ぶりに黒字を確保することができました。
多大なご助力を頂きました仕入先、販売店の皆様、また、何にも増してトヨタのクルマに対して変わらぬご愛顧をいただきましたお客様に、改めて深く感謝申し上げます。
振り返ってみますと、2009年6月に社長に就任して以降、数多くの困難に直面いたしました。トヨタとして、大変厳しい時間を過ごしてきたわけですが、逆に言えば、平時ではできない貴重な経験を積み、多くを学ばせて頂いた時間であったと思います。
特に、リーマンショックの後、赤字に転落した時には、裾野の広い自動車産業では、「急成長しても、急降下すれば多くの方々にご迷惑をおかけする。
持続的に成長することが最も重要である」ということを学びました。また、「台数の拡大イコール成長ではない」ということも痛感いたしました。持続的成長の原動力となるのは、「もっといいクルマ」に他なりません。クラウンやアバロンなど、トヨタに関わるすべての人たちが、もっといいクルマをつくることを一番に考えてつくりあげたクルマが出始めております。また、生産技術の革新や「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー」(TNGA)をはじめとする新しいクルマづくりの革新も進みつつあります。
少しずつではありますが、「トヨタ グローバルビジョン」で掲げた「もっといいクルマ」から始まるビジネスサイクルが着実に回りはじめたことを実感しております。
株主の皆様への期末配当につきましては、1株当り60円を本年の株主総会へご提案させていただく予定でございます。これにより、当期の1株あたり配当金は、中間配当30 円とあわせ、年間では90 円となります。
私は、持続的成長を実現することによって、株主の皆様に、「トヨタの株を持っていてよかった」と思っていただき、より長く保有していただきたいと考えております。そして、重要な株主還元であります配当の安定的・継続的な実施に努めてまいりたいと思います。
2014年3月期の見通しにつきましては、私からは、持続的成長に向けた考え方についてお話をさせていただきます。
長く続いた円高がようやく是正されつつあります。また、自動車市場は、米国における回復や新興国の成長により、今後、拡大が見込まれております。これまでの逆風が収まり、いざ攻勢の時といった声も聞かれますが、私たちはまだ持続的成長のスタートラインに立っただけと考えております。
この4年間、皆で心をあわせて、様々な困難を乗り越える中で、トヨタは多くのことを学んだ、と申し上げました。では、私たちトヨタは、グローバルビジョンに掲げたように、「どんな状況でも確実に利益を上げ、持続的に成長できる企業に生まれ変われたのか?」「まだ、わからない」というのが、率直な私の答えです。
この4年間で、トヨタに関わる全ての人たちの努力によって、トヨタのクルマづくりは大きく変わったと思います。また、収益体質も、一段と強くなりました。しかしながら、経営環境は刻一刻と変化してまいります。再び、リーマンショックを超えるような危機的事態が起こっても、私たちは本当に収益をあげて、その時の社会のお役に立てるのか。私たちが本当に学んだのか、本当に生まれ変わったのかどうかの答えはその時にしか出ないと思います。
私は、足下の環境に捉われることなく、「真の競争力」、すなわち「持続的成長を可能にするための競争力」をトヨタに関わる全員で、真剣に考え、追求していきたいと思っております。
「競争力」というと、「人件費が安い」、「為替が有利」といったことに目が向きがちですが、「人材育成力」、「品質や生産性を追い求める風土」や「イノベーションを生む力」、「アフターサービスを含めた販売力」など、中長期的な視点での「真の競争力」には、データや数値では計りきれない様々な要素があると思っております。国や地域によっても、競争力のあり方は異なります。
「TNGA」の取り組みも、4月に導入した「ビジネスユニット」を軸にした新体制も、全ては、この「真の競争力」を身につけるためのチャレンジです。
今年度もグローバル33万人が「心」をあわせ、持続的成長に向けて、精一杯努力して参りますので、引き続き、皆さま方のご支援をよろしくお願い申し上げます。