生産量は世界トップ
ベルト伝動技術懇話会は大阪産業大学(梅田サテライトキャンパス)で2013年度総会を開いたが(本紙既報)、総会終了後は「中国伝動ベルト伝動の現状と発展状況」と題して、ハルピン工業大学の姜洪源教授が講演を行った。同氏は中国のベルト伝動技術委員会の紹介や中国のベルト伝動の現状と今後の展望などについて熱弁をふるった。
〈中国ベルト伝動技術委員会の紹介〉
1980年に設立され、中国機械工程学会機械伝動分会に所属し、最高管理機関は中国科学技術協会である。委員会には主任1名、副主任3名、秘書長1名、副秘書長1名、委員18名が置かれている。事務局は中国機械研究総院に設置されている。
委員は、大学や研究院所の専門学者および生産企業の科学研究技術人員から構成されており、学術交流、人材共同育成およびプロジェクト研究開発などを通じて、ベルト伝動基礎理論や関係する技術の研究に取り組んでいる。
委員会は、研究機構と生産企業を有機的に結びつけることを重視しており、研究課題の報告と若い人材の共同育成を通じて、新しいものを作り出し、企業の継続的発展を実現し、最近の10年間では約100件の学術研究課題を完成した。
〈中国ベルト伝動の現状と今後の展望〉
ベルト伝動は重要な機械伝動方式であり、機械設備の重要構成部品の一つでもある。従って、ベルト伝動の発展は機械工業全体の発展と繋がっており、関連業界の政策はベルト伝動発展の基礎と条件になっている。
2004年公布の「車産業発展政策」、06年公布の「自動車産業構造の調整意見の通知」、09年公布の「自動車産業調整と推進する企画」のこれら政策には、全て自動車部品産業が中国での優先発展と重点支持される産業として位置づけられている。自動車用伝動ベルトは自動車部品の中の一つとして、これら政策にも影響受け、迅速に発展している。
〈中国の伝動ベルト生産能力〉
ここ10年来に、中国の伝動ベルト産業は著しく発展している。02年の伝動ベルト生産総量は6・9億㌦Amだったが、現在は25億㌦Amの生産能力にまで拡大し、世界トップになっている。伝動ベルト製品の輸出量も伸長している。02年は0・2億㌦Am、12年は1・9億㌦Amまで成長した。
原材料性能と工程レベルの改善に合わせて、伝動ベルトの品質が向上している。中低級市場の要求を満足する限り、高級市場での占有率も高まりつつある。
〈家電製品用伝動ベルトの生産状況〉
11年から、中国家電製品は生産世界経済の鈍化、原材料価格の高騰などの不利要因の影響を受けたが、中国国内ニーズを拡大する政策と製品グレードアップにより、伝動ベルトの生産量は拡大傾向にある。
中国家電協会の調査結果によると、11年年間の生産数量は1兆1425億元、前年比22・4%増となった。12年から伸長率は鈍化したが、中国の都市化建設の推進や農村地域の消費レベルの増加などにより、家電製品は人気を得ている。これに伴い、家電製品用伝動ベルトも着実に伸長している。
ベルトの生産工程は、低弾性「V―リブドベルト」など生産方式はモールド成型方式に変わりつつある。研磨方式より廃棄物と作業者への傷害を低減し、原材料ロスを減らすことにより、ベルトの生産品質が向上している。
〈一般産業用伝動ベルトの生産状況〉
中国ゴム工業協会のホース・ベルト分会の統計で、12年度の伝動Vベルト生産高は15・5億㌦Am、このうち心線構成製品は14・4億㌦Am、伝動Vベルトの主出額は1・95億㌦Amで、Vベルト生産高の12%を占める。同データは、会員外は含まれず、全国総量の3分の2と推定されている。
現在、中国の伝動Vベルトメーカーは基本的に心線構成を採用している。材料は主にポリエステル軟線で、ポリエステル硬線を使う会社は少ない。カバー用帆布は基本的に綿帆布、綿とポリアミドの混合帆布とポリアミド帆布。基本的に90度帆布を使っており、広角帆布の採用は少ない。原材料は、主に天然ゴムとSBRが多い。一部は再生ゴムも併せて使っているが、CRの使用量は少ない。
〈外資企業の中国市場に対する影響〉
外資企業は技術、品質、資金、ブランドの優位性と成熟した市場操作の経験があり、中国の自動車用伝動ベルトの高級市場の大部分を占めている。中国の伝動ベルト業界の発展に対しての衝撃と同時に、巨大な推進作用と一定の挑戦をもたらした。市場競争の中で、外資企業においても次第に中級品の市場に移行する傾向がみられる。
一方、中国国内企業も高級品市場への進出が始まっており、OEM市場においてもシェア拡大が進んでおり、品質とブランド力向上につながっている。
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姜洪源氏は1960年生まれ。82年ハルピン工業大学機械学専門卒後、教職につき、大学に残る。 現在までハルピン工業大学機械設計専攻、教授、博士指導教官、ハルピン工業大学金属ゴム技術研究所所長、ハルピン工大(機械設計基礎)課程教学リーダーを歴任。
大学ではベルト伝動基礎理論と応用技術、金属ゴム技術とマイクロフルイディクス技術に関する研究に携わり、博士約20名、修士約60名を培って、200編の学術論文を発表している。
学外では中国機械伝動学会副主任委員、中国ベルト伝動技術委員会主任委員、中国ベルト及びベルト伝動標準化技術委員会副主任委員、ハルピン市機械設計と伝動学会理事長を兼任。