高性能タイヤのグローバル拠点に
東洋ゴム工業は5月8日、かねてより建設を進めてきたマレーシア・タイピンのタイヤ新工場「東洋タイヤマレーシア」(Toyo Tyre Malaysia Sdn Bhd:以下TTM)を竣工し、記念式典を開催した。TTMは、米国ジョージア州アトランタのTNA、中国張家港のTTZに続く3番目のタイヤ工場となる。マレーシア工場立上げにより、中期経営計画「中計11」において推進している北米、日本、アジアの3極を基点としたグローバル供給体制が整った。
年産1000万本体制視野に
TTMは投資額200億円で2011年4月に設立。生産品目は乗用車用およびライト・トラック用ラジアルタイヤ。
本年末に年産250万本体制が整い、2015年には年産500万本のタイヤを生産していく。敷地面積は60万平方メートルで、東京ドーム10個分に相当する。敷地内に同規模の工場建屋を建設できる敷地も残しており、将来的に1000万本の生産拡張に備える。従業員は800名、販売員は20名(兼任含む)。工場長はシルバーストーンの製造に携わってきた現地の幹部Mike Toh氏が就任する。
同社の中計11では、15年のタイヤ売上を3100億円、営業利益を240億円、営業利益率7・7%を目標としている。さらにビジョン20では、売上目標6000億円、営業利益率10%を打ち出している。
そのためにはグローバル生産拠点が必要であり、11年8月の北米工場3期拡張、10年12月のシルバーストン買収、11年6月の中国シルバーストーン社の買収、11年12月に中国張家港工場の建設などグローバル供給基盤を着々と積み上げてきた。
10年に2900万本だったタイヤ生産を15年には4500万本に引き上げる。
マレーシア工場完成により、日本、アメリカ、アジアを拠点とした世界3極生産供給体制が構築された。
今後は最新工法で製造された高性能タイヤをグローバル市場に供給していく。
シルバーストーンマレーシア工場は、直線距離4キロの至近距離にあり、2工場が人材交流などで経営シナジーを追求する。
当初は「トーヨータイヤ」ブランドを生産し、近いうちに「ニットー」ブランドの生産もしていく。製品の85%は北米を中心に欧州、東南アジアに輸出される。
東南アジア市場への供給拠点となる一方、今後のグローバル・タイヤ・ビジネスにとって重要な輸出チャネルとしてのハブ機能も果たす。
新工場のコンセプト
新工場のコンセプトについて、トーヨータイヤマレーシアの笠井完二社長は「太陽光発電の活用やLED照明の採用などのエコロジカル化、国内外工場の設備、工法を導入し高性能タイヤを製造する高性能、ATOM導入による高生産性、IT技術を採用し特殊技能を必要としないスキルレスの4つ」に集約されると解説した。
日本、アメリカ、中国工場でも採用している新工法ATOMの要素技術を導入することにより、生産工程におけるリードタイムの短縮、プロセスの削減を実現すると共に、高性能なタイヤを生産することができる。
製品レベルに関しても「アメリカ工場、中国工場よりも現実によくなっている」(中倉会長)という。
商品戦略では、認知度の高いハイパフォーマンスタイヤ「プロクセス」ブランドを活かすと共に、ピックアップ、SUVなど多様化するニーズに対応する。また、低燃費タイヤのグローバルブランドのナノエナジーを市場ニーズに応じて投入し、低燃費タイヤのマーケットもリードしていく。
東洋オートセンターを展開
販売戦略については、大型で最上のサービスを提供する店舗「東洋プレミアムオートセンター」と顧客満足度の高いサービスを提供するコンパクトな店舗「東洋オートセンター」をマレーシア全土で展開している。15年末までに、マレーシア全土で約40店舗までに拡大する考え。
販売員による顧客サービスを充実させることはもちらん、ニーズをきめ細かく掘り起こして、市場が求める新商品開発へフィードバックも図っていく。