ランクセス 株主総会で12年度業績発表

2013年05月29日

ゴムタイムス社

 ランクセスは、今年の年次株主総会において約2千名の出席者を前に、2012年度が好業績であったことを発表した。グループの通年の連結売上高は、前年比4%増の90億9400万ユーロ。特別項目調整前EBITDAは、前年比7%増の12億2500万ユーロ、純利益は前年比2%増の5億1400万ユーロとなった。

需要低迷に積極的な対策

 同社CEOであるアクセルC・ハイトマン氏は、「株主の方々にも、昨年度の好業績の恩恵を受けていただきたい」と述べた。経営委員会と監査委員会は、2012年度の配当金として1株あたり1ユーロを年次株主総会で提案した。前年比約18%増となり、配当総額は8300万ユーロを上 ハイトマン氏はまた、同社が直面する2013年度の厳しい状況について説明した。特にタイヤおよび自動車産業における脆弱な市場環境のもと、2013年度第1四半期の連結売上高は前年同期比12%減の21億ユーロとなった。特別項目調整前EBITDAは、前年同期比53%減の1億7400万ユーロ、純利益は前年同期比87%減の2500万ユーロとなった。

 同社は、これらの状況に対し、すでに積極的な対策を講じている。「同社は皆様の期待に応えるべく、迅速に揺るぎなく、そして目的達成を重視して対応していく」とハイトマン氏は述べている。
 同社は、パフォーマンスポリマーズ部門の複数のプラントを一時的に閉鎖し、柔軟な資産管理およびコスト管理方針を継続している。さらに、パフォーマンスケミカルズ部門においても追加の措置が予定されている。これらの措置は、単に短期的なコスト削減の実現のみを意図しているのではない。同社は、当該部門の世界の各拠点の中長期的な競争力強化を目指している。また、ランクセスは、2013年の設備投資予算額を、6億5000万から7億ユーロから6億ユーロに縮小した。

下半期は復調の見込み

 同社は、第2四半期の特別項目調整前EBITDAは徐々に回復すると見込んでいるが、2億2000万ユーロを下回ると予測している。ハイトマン氏は下半期には経済が回復してくると展望している。「アジア、特に中国では、大幅な好業績が期待できる一方で、欧州市場では、困難な状況が続くだろう。農薬の需要は引き続き堅調で、建設業界では緩やかな回復を期待している」とハイトマン氏は述べている。同社は、2013年度通年の特別項目調整前EBITDAは、10億ユーロを下回ると予測している。
 中期利益目標として掲げている特別項目調整前EBITDAの目標値(2014年度:14億ユーロ、2018年度:18億ユーロ)は維持できると見ている。同社はこれらの目標を達成するため引き続き、技術力に優れた製品、新興市場、そしてメガトレンドの農業、都市化、水資源、車社会化に注力して取り組んでいく。
 特に「グリーンモビリティ」は、引き続きランクセスの成長分野の中核となっている。2012年度の「グリーンモビリティ」関連製品および技術の売上高は、全体の約17%を占める。同社は、未来の車社会をより効率的で環境に優しいものにするために、車両軽量化や航空機用部品向けの高性能プラスチックや、「エコタイヤ」用の高性能合成ゴムによって貢献している。年次株主総会の出席者は、展示や図解で実際にこれらの製品を目にすることができた。
 3事業部門では、同社の持続的成長に貢献するプロジェクトが進行中。パフォーマンスポリマーズ部門では、シンガポールのブチルゴム製造プラントの開所式が予定通り6月4日に行われる。商業生産は予定通り第3四半期に開始される。アドバンスト中間体部門は2015年までにレバクーゼン拠点において、
サルティゴ事業部が農薬の有効成分の分野を強化するなど、約1億ユーロ
の投資を計画している。パフォーマンスケミカルズ部門では、タイヤ生産に使用される高性能ブラダーの新製造プラントが、数日前にブラジルで開設された。

5周年を迎えるランクセス・アリーナとランクセス教育支援プロジェクト
/予定通り本社機能をケルンへ移転

 今年の年次株主総会は、ちょうど5年前に同社が命名権を取得したランクセス・アリーナで開催される5回目の総会となる。2008年6月の命名以来、ドイツの人々の間での同社の認知度はほぼ30%増加した。これはビジネス関連の約500人を対象に、2013年3月にドイツで行われたオンライン調査による結果だ。昨年、ランクセス・アリーナには約150万人の観客が訪れ、ドイツで最も観客数を集めたイベント会場となった。そして今年の第1四半期には、世界の多目的会場の第3位にランクされた。
 同社は、この9月よりケルンとの関係をさらに密接にし、ランクセス・アリーナに隣接するケネディプラッツに建設中の新本社社屋「ランクセスタワー」から、グローバルに事業を展開する。同社は「ケルンの新グループ本社は、同社の事業運営の基盤となるドイツやノルトライン・ヴェストファーレン州に対する明確なコミットメントを表している」と述べている。同社グループ本社のケルンへの移転計画は予定通り進んでいる。
 それに伴い、約1千名の従業員が約3万8500平方メートルの床面積を備える「ランクセスタワー」に移動する。グループ本社の新社屋は、9月3日に開所式が行われる。この新社屋の模型は、年次株主総会の出席者に紹介された。
 同社教育支援プロジェクトも、5年前にスタートした。2008年以降、テーマに沿ったプロジェクト週間、科学知識を競うイベント、また材料提供や寄付金などを通して、同社は学校での科学教育の促進をサポートしてきた。大部分のプロジェクトはドイツで実施されている。たとえば昨年末から、小学校の授業向けに特別に開発した化学実験キットを配布している。
 ドイツの同社の事業拠点に近接する地域では、合計270の市立小学校が実験キットを受け取った。これまでに同社は600万ユーロを教育支援プロジェクトに投資した。そのうちドイツだけで400万ユーロを占めている。このように、同社は世界中に約200のプロジェクトを通して、約10万人の青少年の育成活動を行ってきた。
 ハイトマン氏は「この取り組みは、サポートを受ける人たちのためだけでなく、同社自体の利益のために、引き続き同社の持続可能な企業戦略の不可欠な部分となっている。ドイツの化学産業に専門家が不足していることを誰も否定することはできない。だからその影響を受ける誰もが、積極的に関与する必要がある」と述べている。

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