信越化学 放射線遮蔽液状シリコーンゴムを開発

2013年06月03日

ゴムタイムス社

 信越化学工業は30日、放射線を遮蔽する液状シリコーンゴム「ラディバリヤーシリーズ」を開発したと発表した。
 東日本大震災による福島第一原発での事故発生後、福島県を中心に放射性物質の除染作業が進められているが、構造上などの問題で除染が難しい個所(屋根、床下、コンクリートやアスファルトの亀裂など)が多数存在しており、室内やその周辺の空間線量が上昇する原因となっている。

 「ラディバリヤーシリーズ」は、液状シリコーンゴムに放射線遮蔽物を配合することにより、ガンマ線を減衰させる性能を付与したもので、同製品を放射性物質の除染が必要とされる一般住宅や放射性物質保管施設などに使用することにより、長期間での累積被ばく線量を大幅に減らすことができる。
 同シリーズには、低粘度で狭い隙間にも流し込める「ラディバリヤー101」、高粘度で垂直面などのシーリングに適した「ラディバリヤー102」がある。いずれも、室温で硬化させた後は、従来のシリコーンゴムと同様に、優れた耐熱性、耐寒性、耐候性を発揮し、長期信頼性に優れている。また、シート状に成形した遮蔽シリコーンゴムシート「ラディバリヤーシート」や遮蔽保管容器などの応用製品もすでに開発されている。
 同製品は、福島県郡山市に本社を置き、放射性物質の除染を行うEARTHからの要請により研究に着手したもの。開発過程で、大手ゼネコンや福島県の地方自治体などと共同で、製品の性能検証も実施している。一例として、セシウム137(Cs137)を線源とする線に対して、厚み3㎝のシートで約70%の減衰率を示した。
 また、シリコーンゴムの優れた耐候性、耐久性は、建築用シーリング材や電子部品用途などで広く認知されており、長期信頼性が要求される材料として最適である。さらに、同シリーズは鉛などの環境負荷物質を含まないため、使用後に焼却炉で焼却処分できるという大きな利点もある。
 同社では、さらに放射線の遮蔽効果を高めた試作品の開発にも成功している。将来的には、原子力関連施設や医療分野などで放射線の遮蔽に用いられている鉛の代替材料としての貢献も視野に入れている。
 なお、国の除染特別地域および汚染状況重点調査地域での製品の販売は、EARTHが窓口となり、その他については信越化学が窓口となる。信越化学は、これからも素材と技術を通じて被災地の復興を支援していくとしている。

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