BASFは5日、熱可塑性ラミネートやテープなどの半製品、オーバーモールド用樹脂に加え、包括的なサービスを含む新しいパッケージUltracom(ウルトラコム)を、2013年10月から提供すると発表した。
統合型開発プラットフォームとしての同パッケージは、最初にコンセプトを創案し、次に設計、シミュレーション、加工および部品試験を行い、その結果顧客が効率的な大量生産を行えるようにサポートする。また、Ultrasim(ウルトラシム)シミュレーションツールを用いた設計支援、コンポジット部品向けの新たな試験設備や、広範囲な要求に対応可能な同社での部品試験によるサポートも提供する。
同社は部品開発において、専門性を高め、顧客に最適なサポートを提供するため、同社のテクニカルセンター内に熱可塑性プラスチック用大量生産適応型コンポジット加工試験設備を導入した。このシステムは、2013年3月から、インモールド成形(オーバーモールド成形)による多機能コンポジット試験片の作成に利用されている。
この加工工程は、ラミネートや射出成形用樹脂を使った構造部品の生産に、最も有望なアプローチ。同工程では、まずラミネート(ドレーピングまたは型内熱成形)が金型内で行われ、次にオーバーモールドが行われる。ラミネートを金型外で加熱した場合は、ラミネートの金型占有時間が削減されるため、サイクルタイムは大幅に短縮される。ただし、加熱して軟化したラミネートのインサートの確実な処理と位置調整が必要だ。
この新たな試験設備によるコンポジット部品設計のすべての要素を試験するため、同社は独自の試験片の開発も行っている。これはCIFO(『combination of in―mold forming and overmolding(インモールド成形とオーバーモールド成形の組み合わせ)』)というもので、顧客と共同開発する連続繊維強化コンポジット部品並びに材料を検証するための多機能試験片である。この試験片は、縦横40cm×40cm、高さ4・5cmで、1・5mm厚の成形ラミネートと、リブなどの最大3mm厚のモールド成形部分で構成される。
約20の機能により、実際のコンポジット製造における特徴や問題点を再現できる。同試験片の特別な機能には、流動長が長い部分や、インサート品のマウントに利用されるホールなども含まれる。追加機能としては、衝撃吸収能力評価用特殊リブ、オーバーモールド成形性確認用リブ、リブありU字型部分などがある。作成されるCIFO試験片は、完全にオーバーモールドされるため、追加の処理を必要とせず、成形後の後加工も不要。
CIFO試験片作成用の金型(Georg Kaufmann Formenbau ゲオルグ・カウフマン・フォルメンバウ社による)は、取り替え可能なインサートの利用により、非常に汎用性が高く、ラミネート成形の適用可能範囲などを検証することが可能。高度に設計された金型は、特殊クランプの利用により、簡潔かつ正確なラミネート処理を可能にする(このクランプにより、金型が閉じる直前までラミネートが制御される)。
連続繊維強化熱可塑性コンポジット部品を実際に作成するためにドイツ・ルートヴィッヒスハーフェンに設置された試験設備は、ラミネートをクランプに自動で挿入する装置であるラミネートハンドリング用6軸ロボット、赤外線加熱装置(自動化およびプログラミングを含め、すべてFPT Robotik(エフ・ペー・テー・ロボティック)社製)、射出成形装置(KraussMaffei(クラウス・マッファイ)社 KM 300 1400C2 型締力300トン)、ホットランナー型、ホットランナー制御装置、ロボット制御装置等で構成される。
新しいコンポジット試験設備における加工工程では、ラミネート処理において、3つのクランプがセル内で同時に使われるため、最短のサイクルタイムを実現する。この工程では、ラミネートのクランプへの挿入、クランプごとのラミネート加熱、クランプを射出成形用金型に装填、ラミネートの成形(ドレーピング)およびオーバーモールド、クランプおよび仕上がり品の取り出しが実施される。
クランプが射出成形マシン内にあるとき、別のクランプはIR加熱炉(最高 250°C)内のラミネートを保持し、また別のクランプはロボットにより新しいラミネートを装填する。ロボットは、高い精度を維持しながら、ラミネートをクランプに挿入する。
多くの検証により、この試験設備(もしくは同様のプロセス)において 1分のサイクルタイムが実現可能であることが実証されている。これは、一般的な射出成形工程と同等。したがって、この試験設備(もしくは同様のプロセス)は大量生産が必要な部品の製造に適応可能であることを示している。
Ultracomのサービスパッケージの2つ目の要素として、Ultrasimシミュレーションツールがある。ガラス繊維織物からなるラミネートやUDテープ、並びにオーバーモールド用短繊維強化型樹脂からなる部品は精度よく計算・解析することが可能。同機能はOpel Astra OPCのシート骨格に、既に利用されている。
同社が提供するUltrasimを使用することにより、樹脂部品の製造工程の影響を考慮した機械特性を計算できる。樹脂流動解析と連続繊維強化型ラミネートのドレーピングシミュレーションによって繊維配向を解析し、各部分の繊維配向結果を構造解析モデルに反映(マッピング)させる。連続繊維強化部分に関しては、従来の Ultrasim材料モデルを拡張した完全に新規の材料モデルを使用している。この新規材料モデルは典型的な繊維強化熱可塑性樹脂の特徴である異方性、非線形性、速度依存性、引張圧縮非対称性、温度依存性、様々な破壊特性を考慮している。
これと同様に重要なのが、部品のデザインと一方向強化繊維からなるUDテープまたは二方向強化繊維からなるラミネートの繊維をどのように配置するかだ。ここでは、すでに短繊維強化樹脂で使用されている最適化の方法を強化している。短繊維強化樹脂の分野でよく知られているUltrasimによるサポートを、Ultracom連続繊維強化樹脂でも利用することができる。
同社は、試験ラボにおいて、試験片サンプルおよび新たなコンポジット部品の評価に、コンポジットのノウハウを組み込んだ様々な試験装置を使用している。新たなコンピューター断層撮影(CT)システムにより、現在、材料、部品サンプルを完全に新しい方法で検証することが可能。CTは、これまでにない非破壊検査的な方法で、コンポジットの内部構造を詳細に検証することが可能だ。
その他の試験機能としては、耐温度、耐候および耐薬品への長期暴露装置のほか、静的、動的、クラッシュおよび内部圧力などに対する耐久評価を行うことが可能。また部品サンプルは、目標となる引張り応力、圧縮、屈曲ねじり負荷などに対して、異なる温度で耐久性評価をすることが可能。さらに、コンポジット部品のマルチマテリアル材料設計に欠かせない要素として、溶着や接着、ボルト締めといった接合技術の調査、評価および最適化を行っている。
シミュレーションや部品試験とともに、顧客とのプロジェクトで、新たな熱可塑性コンポジットの製造に必要な試験設備が利用可能となっている。現時点では、半製品としてのラミネートを中心として検証されているが、K2013(国際プラスチック・ゴム産業展)までに、単方向UDテープが評価されていく予定。同社は、シミュレーション、加工技術および試験ラボによる部品評価などを組み合わせた総合的なアプリケーション開発により、材料の特性評価から大量生産に適した製造方法まで、開発プロセス全体を通じて顧客にサポートを提供する。
2013年07月11日