クラレ 伊藤社長が会見 スマホ用素材などの生産増強

2013年08月31日

ゴムタイムス社

 クラレの伊藤文大社長は8月27日、東京・大手町の東京本社で記者会見を開き、13年度の業績推移や業績予想、中期経営計画の進捗状況などについて語った。
 今年度の第1四半期連結業績については、売上高932億円で前年同期比5・2%増の増収となったものの、営業利益は104億円で同11・0%減、経常利益は103億円、同2・3%減の増収減益となった。四半期純利益は66億円で同12・6%増。
 伊藤社長は「減収要因については償却費が増え、会計処理面で未実現利益が発生、これらを挽回すると考えられていた欧州市場の回復が想定に届かず、PVBあるいはエラストマー関連事業が想定ほど伸びずに挽回できなかった」と分析。純利益がプラスになったのは「昨年度M&Aで特損が発生したが、これがなくなったこと」とした。
 上期の業績予想については、当初予想に対し、営業利益を270億円から260億円に下方修正。通期は売上高4300億円、営業利益600億円、経常利益585億円、純利益350億円の当初予想を維持する考えを示した。
 その上で「上期の営業利益を10億円の減益にしたことは、4~6月の利益104億円に対し、7~9月は52億円の増益にならなければならないが、これに対しては未実現利益等が解消し、さらにプラスの分が見込まれることで17億円、定修等の費用が25億円程度減少、事業収益が10億円ほど増加する」(伊藤社長)ことで達成。通期予想を据え置いたことについては「各カンパニーで下期の計画を策定中だが、当初計画に比べ水溶性ポバール、エバール、ジェネスタ等のスペシャリティケミカルの事業が想定していたよりも好調に推移していることで、下期にはなんとか10億円ぐらい上乗せできるだろう」と理由を述べた。
 3ヵ年の中計「GS―Ⅲ」に関しては「地球の課題に応え、かつ成長領域である水・環境、エネルギー、光学・電子領域で、次世代の事業の開発を推進している」(伊藤社長)とし、その観点から、リチウムイオン電池負極材「バイオハードカーボン」の工場を建設中であることを紹介するとともに、15億円を投資して、液晶ポリマーフィルム「ベクスター」と耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」の生産能力増強を決定および実施したことを明らかにした。
 ベクスターは回路基板としての伝送損失が小さく、かつ耐熱性などにも優れた回路基板材料。スマートフォン・タブレット用途での需要拡大が見込まれることから、年産40万㎡の西条事業所の現有能力を14年4月に同100万㎡へ増強。電子機器や自動車部品の小型・軽量化、LED光源の普及に貢献する「ジェネスタ」は、市場拡大に対応するため鹿島事業所と西条事業所の合計年産1万トンの生産能力を、今月1万3000トンに引き上げた。
 また中計では、初年度の2012年が世界の経済環境が想定以上に悪かったことから、営業利益や設備投資計画は後送りになる見込みであるが、「中計自体を見直す予定はない」と伊藤社長は述べた。

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