東レは27日、米国のラージトウ炭素繊維メーカーZoltek Companies, Inc.(ゾルテック、以下「Zoltek」)との間で、同社の全株式を1株あたり16・75USドル、総額約584百万USドルで取得することに合意したと発表した。
炭素繊維の世界需要は、軽量化による省エネルギーだけでなく、石油・石炭代替エネルギーの普及に貢献する素材として、今後も年率15%以上の成長が期待されている。航空機用途に代表される高機能・高品質を要求する用途ではレギュラートウの適用が拡大する一方で、近年急速に需要が拡大している風力発電関連用途や今後の拡大が期待される自動車構造体用途では、コストと性能のバランスからラージトウの採用拡大が見込まれており、今後はレギュラートウとラージトウそれぞれの特徴を活かした需要が形成されていくものと予想される。
ラージトウは、フィラメント数が40K(4万本)以上の炭素繊維で、衣料用アクリルトウ設備転用により製造され、比較的安価な製品として風力発電機翼、樹脂コンパウンド強化剤等に使用され、レギュラートウは、フィラメント数が24K(2万4千本)までの炭素繊維で、専用設計されたプロセスにより製造され、航空機等、高性能・高品位分野で使用される。
Zoltekは1988年にラージトウ炭素繊維事業に参入し、1996年にハンガリー、2007年にメキシコのアクリル繊維工場を買収して、ラージトウ炭素繊維の需要開拓を進めてきた。レギュラートウ炭素繊維メーカーとは一線を画すマーケティング戦略を推し進め、徹底的にコスト競争力を強化することで、近年では風力発電関連用途需要の伸張に伴って事業・業績を大きく拡大している。
東レはこれまで、高機能・高品質レギュラートウ炭素繊維に経営資源を集中することで、ボーイング787向けをはじめとする航空機や天然ガス圧力容器などの先端分野で強みを発揮してきたが、ラージトウ炭素繊維の品揃えがなく、風力発電関連用途や自動車構造体用途等のより汎用性の高い産業分野の成長をいかに取り込むかが課題となっていた。今回Zoltek買収により、レギュラートウ炭素繊維とは全く異なる分野での事業展開が可能となり、新たな成長の機会を得ることになる。
同社は炭素繊維複合材料事業を戦略的拡大事業と位置づけ、積極的な経営資源の投入による事業拡大を進めている。新たにラージトウ炭素繊維事業に参入することにより、幅広い分野で地球環境問題にソリューションをもたらす先端素材として、より一層の事業拡大を目指すとしている。
〈Zoltek Companies, Inc(Zoltek)の概要〉
▽事業内容=ラージトウ炭素繊維複合材料の製造販売
▽所在地=米国ミズーリ州セントルイス
▽設立=1975年
▽代表者=Zsolt Rumy氏(社長 兼 CEO)
2013年10月01日