十人十色の事業承継 第11回

2013年11月04日

ゴムタイムス社

 事業承継の事例-2

 さて、前回は会社の存続を目的とする事業承継についてお話を致しましたが、今月号では、それに伴って実行した個人(経営者一族)の事業承継の経緯についてもご説明しなければならないと思います。
 前回は経営者一族が所有している土地の上に会社が建っていた状態を利用して借地権と底地権の等価効果を行い、更に経営者一族が新会社を作り、従来の会社と共同で敷地一杯にビルを建て直したことをお話しました。
 次に行ったことは、経営者一族と新会社との間での普通定期借地権(50年)の契約の締結です。 この際に、新会社は契約保証金を無利息で50年間経営者一族に差し入れる設定を致しました。
 その経済的効果(利回り)を勘案し、新会社が経営者一族に支払うべき地代を通常よりも低く設定することが可能になり、新会社の経費負担を軽減することが出来ました。
 新会社は、土地バブル崩壊後に他人では余り使い道のない、社長の自宅の隣の土地を別途入札で安く購入致しました。これは、多分にラッキーでした。
 ビルを建てた土地(旧土地)の持ち主は社長と社長の姉妹3人と社長の息子の合計5人の名義でしたが、その土地をバブルが弾けて価格が最低になった時に、新会社が買い上げました。
 この姉妹のうち結婚している2人の分の土地を、当然のことながら保証金を支払っていたので、譲渡金額から保証金分を引いて決済をすることが出来ました。こうして、新会社は資金的負担を軽減する事が出来たわけです。
次に、独身で子供がいないもう1人の社長の妹については、社長の長男(事業承継者)と養子縁組をさせ、相続時には新会社の建っている土地が、自然に長男名義になるように致しました。
 新会社が格安で購入した土地は、社長が従前から持っている土地と繋がったために評価が高くなりました。そこで、この土地と新会社が建っている社長所有分の旧土地との等価交換が可能になりました。
 なお、新会社の株主は設立した当時から、事業承継の事を考えて長男を100%の株主としておりましたので、新会社の土地の事業承継は終了した事に為りました。
 そこで、最後に手を付けたのが、旧会社の株式の問題です。
 これは、以前から社長から長男へ連年贈与を納税が余り掛からないように繰り返しておりましたが、ある時期に意図的に株価を下げる方法(全損生命保険や会計上出来る限りの利益圧縮等々)を行い、取引銀行の了解を取り付けて、一番地価の低い時を狙い、株価を一挙に下げ、税務負担が余りない時期に大きく贈与をしました。
 勿論、今でも連年贈与は続けておりますが、これにより可成りの株数を社長から長男に移すことが出来たのであります。
 以上で、この会社及び一族の事業承継はほぼ完全な状態になったわけです。
 これだけの事は一挙に出来る訳は有りませんので約10年位を掛けて仕上げたものです。
 これからも社長の旧会社の持ち株が限りなく0に成るようにしていくつもりです。
 最後に来年度からの新たな一手として、社員持ち株会を作り、社長のある程度の持ち株を社員に持たせようと考えております。

《LLP千代田コンサルティングファーム》
 CPA・CFP・会社法務士 代表 山本眞 
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