JSRの2014年3月期第2四半期連結決算は、売上高が1887億8500万円、前年同期比3・4%増、営業利益は為替円安効果もあり178億4700万円、同4・6%増、経常利益203億8000万円、同3・2%増の増収増益となった。
エラストマー事業部門の合成ゴム販売は前年同期のエコカー補助金による特需の反動によりタイヤ、自動車需要が低調に推移する中、海外向けの顧客稼働の回復により、売上高は前年同期比0・4%増の964億800万円となった。営業利益は7月~9月期以降の低燃費タイヤ用ゴムの需要回復と定期修繕費用などのコスト削減により、前年同期比9・1%増、85億6700万円となった。エラストマーの海外輸出比率は数量ベースで3割、金額ベースで4割弱を占める。
合成樹脂事業部門は国内の需要減を海外での自動車向けの数量増、円安の効果がカバーし、売上高は前年同期比2・8%増の264億9100万円の微増となったが、営業利益は原材料価格上昇に対応した販売価格改定が寄与し、同30・8%増の18億7500万円となった。
多角化事業部門は半導体材料でArFが伸びたものの、パソコン用の需要低迷で前年同期並み。精密材料・加工事業は耐熱透明樹脂「アートン」の出荷が伸びず、売上高は前年を下回ったが、FPD材料事業が主要パネルメーカーの生産回復により着色レジスト、配向膜が大きく伸びたのに加え、円安効果(1円の円安で年間4億円の増収)により販売が前年同期比2割増と前年を上回ったことにより、多角化事業の売上高は同8・4%増の658億8600万円。しかし、営業利益は半導体材料事業の不振、先行投資による費用が加わり、前年同期比4・8%減の74億400万円となった。
当期間中の取り巻く経営環境は為替が前年同期に比べ19円の円安となったほか、エラストマーの主原料であるブタジエンの市況も足元、10月26日現在でアジア価格がトン当たり1750ドルに達しており、最終製品の需給バランスが戻ってきた。期間中の国産ナフサ価格は為替円安により6万5000円/Klと前年同期に比べ9800円上昇。
こうした中、当期間中の石化系事業における合成ゴムの販売数量は31万8926トンと前年同期に比べ3%減少、合成樹脂の販売数量も1割の減少となっており、「合成ゴム販売の6割強を占める自動車タイヤの生産が1~8月計で前年同期比3%減となっており、ほぼ需要業界の自動車タイヤ生産に見合う販売数量」(平野勇人執行役員)としている。石化系事業の販売数量が落ち込んでいるのにもかかわらず、石化系事業全体の営業利益が前年同期に比べ12億円ほど増えているが、「円安による収益改善に加え、四日市工場の修繕費の減少、来年の本定修に向けた在庫積み増しによる固定費の減少及び売値と在庫の簿価が逆転する評価損がなかったため」(同)であるとし、実態は売上高、営業利益もほぼ前年同期並みで着地した。また、ブタジエン価格が期中に大幅に下がっていたのにもかかわらず、エラストマーの営業利益率が8・9%で推移していることについて、「物量は別だが、市況に対しては強い体質になってきたことがこの半年間で確認できた」としている。
通期業績予想を下方修正
通期の業績見通しについては、エラストマー事業ではタイヤ需要が通期で5%程度の伸びが見込まれるが、下期は当初予想の伸びに届かないほか、多角化事業での半導体部門の需要減が予想されるとし、通期業績予想を下方修正した。期初予想に比べ売上高は150億円減の4000億円(前期実績比7・・7%増)に、営業利益も60億円減の370億円(同5・1%増)、経常利益70億円減の400億円(同8%減)にそれぞれ下方修正した。売上高の減収額はエラストマー部門で100億円、多角化事業の半導体部門で50億円としている。経常利益については、持分法の投資損益の悪化が見込まれるため。
通期の部門別売上高はエラストマーが2100億円(前期比7・3%増)、合成樹脂600億円(同15・8%増)、多角化事業1300億円(同4・9%増)といずれも増収を見込んでいる。