クラレは20日、中国へのビニロンプラント輸出50周年記念式典を11月15日、当時プラント建設を行った北京で開催したと発表した。
当日は、中国人民対外友好協会や在中国日本国大使館からも来賓を迎え、約200名が出席した。式典では、大原謙一郎氏(同社第2代社長 大原總一郎氏子息、大原美術館理事長)による講話、大原總一郎氏の研究者である早稲田大学客員准教授、兼田麗子先生の講演、日中でプラント輸出に関わった当時の関係者による座談会が行われた。
中国へのビニロンプラント輸出については、1958年、中国化学工業考察団が来日した際、民生用繊維増産の目的でビニロンプラント輸入の申し入れがあり、交渉がはじまった。当時はまだ日中間に国交が回復しておらず、中国へのプラント輸出は極めて異例だったが、同社は1963年6月、ポバール・ビニロン一貫生産プラントを輸出する契約を締結した。これは、1962年11月に日中両国間で結ばれた「日中総合貿易に関する覚書(LT協定)」に基づく、中国へのプラント輸出の第1号となった。
ビニロンは、ポリビニルアルコール(ポバール)を原料とする合成繊維で、京都大学の桜田一郎教授らによって1939年に開発された。日本における合成繊維の第一号でビニロンと命名され、1950年に同社が世界で初めて工業化した。合成繊維の中で最も親水性があり、高強力で耐候性に優れる上、アルカリや酸に強いのが特長。アスベスト代替のセメント補強繊維として、欧州や日本国内の建築市場で需要が拡大しており、今後東南アジア、東ヨーロッパ、中南米での活躍も期待されている。
2013年11月21日