住友ゴム工業 ハイブリッド事業の現況と事業戦略

2013年12月16日

ゴムタイムス社

住友ゴム工業 ハイブリッド事業の現況と事業戦略

 

 ファインラバー、クリーンラバー、ブランケット、インフラビジネス、生活用品ビジネス、制振事業推進部の6ビジネスチームで事業展開を図るハイブリッド事業。住友ゴム工業のハイブリッド事業では新長期ビジョン「VISION 2020」の中でファインラバー、クリーンラバー、制振事業での成長と新分野の創出で2020年に売上高800億円を目指す。ハイブリッド事業の現況と今後の事業戦略について原田直典執行役員ハイブリッド事業本部長に聞いた。

ファインラバー、クリーンラバー順調に拡大 20年に売上高800億円目指す
13年通期は増収増益を予想 復興需要でインフラ系も好調

ハイブリッド事業の足元の需給動向からお聞かせください。

原田直典 執行役員

原田直典 執行役員

原田氏 上期のハイブリッド事業を牽引したのはOA機器用のプリンターロールです。開発部隊が開発した製品が一部のプリンターメーカーに採用されたのが大きく、為替の円安も寄与した。インフラ事業では、人工芝、工場の床材、防舷材は好調です。復興需要、景気対策で各地方自治体が港湾工事を積極的に進めているのでプラスとなっている。一番苦戦しているのは生活用品であり、手袋需要は落ち込んでいないものの、円安により仕入れが上がっているほか、逆に単価が下がっており、収益的には厳しい。

各ビジネスチームの具体的な伸び率は。

医療用コ゛ム栓

医療用コ゛ム栓

 原田氏 今年の1月から組織変更を実施しており、これまではOA機器用ロール、ゴム薬栓、印刷用のオフセットブランケットを一つの統括部としていたが、この三つをそれぞれファインラバービジネスチーム、クリーンラバービジネスチーム、ブランケットビジネスチームに分割、これにこれまでのインフラビジネスチーム、生活用品ビジネスチーム、制振事業推進部を加えた6ビジネスチームでの事業展開となった。

 具体的な伸び率はファインラバーが対前年同期比23%増と大きく牽引、クリーンラバーは同7%増、オフセットはほぼ横ばい。制振事業はもともと分母が小さいこともあり、同70%増と大きく伸びた。インフラ事業では土木、防舷材が同16%増、建築フロアーの床材も同16%増となったが、体育施設は上期は需要が伸び悩み、同17%減となった。生活用品は手袋、ガス管、介護用スロープなどがあるが、介護用スロープは介護ビジネスの競争激化で少し落ちてきた。ガス管はほぼ横ばいで国内需要が大きく変動することはないが、生活用品ビジネスチームが若干落ち込んだ。

海外事業展開について。

樹から生まれた手袋(フ゜リティーネ)①

樹から生まれた手袋(フ゜リティーネ)①

 原田氏 OA機器用ロールは中国の中山、ベトナムにあるが、ベトナム工場では現在、生産能力を増強中で2014年までに20%アップされる。プリンターメーカーの生産地域が中国からベトナム、タイ、フイリピンなどの東南アジアにシフトしており、プリンターの生産台数が今後大きく伸びるとは予想しにくいが、中国市場では大手のプリンターメーカーに加え、非純正メーカーへの拡販に努め、新製品開発により一台当たりの装着率を増やしていきたい。
 手袋はマレーシアの工場製品と、ダンロップホームプロダクツの仕入れ販売が半々ぐらいだが、マレーシアの工場自体がグローバル規模ではないので、特に大きく増設するということではなく、付加価値を付けた形で最低限の稼働率を維持できればと思っている。

通期の需要見通しについて。

新型MIRAIE

新型MIRAIE

制振材を成長事業の柱に 戸建制震ダンパー「ミライエ」

 原田氏 年間を通しては通期売上高は前年同期比10%程度の増収を見込んでいます。OA機器用ロールは、足元、7―9月も堅調に推移しており、年末にかけてはプリンターの機種切り替え、品種変更などがあるものの、おおむね堅調に推移するとみている。OA機器用ロールは中期的には低価格プリンターにより市況が下がってくることが予想され、我々部材メーカーもコストダウンでの対応を余儀なくされそうだ。
 もう一つの成長商材である制振材事業では昨年4月に戸建の制震ダンパー「ミライエ」を発売、この10月にも改良版を出しましたが、この分野は堅調に推移するとみています。「ミライエ」自体は全くのニュープロダクツですので、地道にユーザーに標準装着をお願いして拡販を図っていきたい。また、クリーンラバーのゴム薬栓は薬価が引き下げられたりすると、薬メーカーらのゴム栓のコストダウン要請が予想されるが、それを除けば数量的には順調に伸びていくのではないかとみている。
 インフラ関係も復興需要などで引き続き好調に推移するとみている。懸念材料は人手不足。東京オリンピックも決まり、インフラ関係者はオリンピック需要も含めて気分的にはポジティブになっているが、足元の人手不足に少し水をかけられそうだ。生活用品は季節要因もあるが、ガス管、手袋は安定した数量が出ており、大きく売り上げが落ちるようなことは考えていない。

インフラ事業では東京オリンピックや復興需要が大きく期待できそうですが。

 原田氏 スポーツ床材、人工芝などの需要は当然あると思います。国立競技場の改修についてもフィールドだけでなく付帯設備はじめ、交通機関のインフラでも橋、高速道路、海底トンネル鉄道などでの私どもの土木関係製品への需要の拡大に期待を寄せています。この分野では他社よりも差別化した人工芝、土木製品を供給、コストダウンと並行して拡販を図っていきたい。

2020年にハイブリッド事業売上高800億円を掲げていますが。

ファインラハ゛ー

ファインラハ゛ー

 原田氏 大きな流れの中では、私どもは昨年、グループの持続的成長に向け、2020年を目標年度とし、「Go for NEXT」を新たなスローガンとする新長期ビジョン「VISION 2020」を策定し、ハイブリッド事業では制振技術の普及、ヘルスケアビジネスの展開による新分野の創出で年率10%の成長を目指しています。
 それぞれの商材について需要動向に濃淡がありますが、基本的にはファインラバー、クリーンラバー、制振事業での成長を見込んでおり、クリーンラバーではヘルスケア領域で伸ばしていきたい。ベースになるのはゴムの加工技術であり、ゴムの加工技術の横展開、応用により新しい技術を切り開いていきたい。その中での事業課題としては基本的にはスピード。ハイブリッド事業はタイヤに比べて20分の1の売上げ規模ですが、タイヤのような時間軸で考えていたらタイヤ以上に伸ばすことができない。その意味でも、タイヤの倍、3倍ぐらいのスピード感を持ってあらゆる仕事に対応していきたい。
 人材面ではそれぞれの商材、マーケットを熟知したスペシャリストがたくさん育ってきていますが、それぞれの商材、チャネルごとをつなぐ横断的な展開やM&Aなどの自由な発想をする人材がやや不足している。若い中堅以下の人材を活用し、人材の質と量の確保をスピードあげていきたいと思っている。
 2020年に800億円の売上を達成させるためには、成長3商材の海外展開を進めていかなければならないが、単に新しい拠点を造って工場を建てることも一つの王道としてありますが、やはりM&Aを考えてスピードをつけていかなければならないと思っています。
 OA機器用ロールのプリンターロールでは非純正分野での拡販、制振材では地震国に対してのアプローチに加え、制振ダンパーだけではなく、免震と制振との組み合わせなどの品揃えを図りニーズに応えていきたい。加古川工場でコアになる高減衰ゴムをつくっているが、長期ビジョンで描いている売上規模にするには今後、生産能力増強を考えていかなければならないだろう。

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