「イノベ―ション」を経営スローガンに掲げる田中公章社長に14年度からスタートする新中期3ヵ年経営計画の骨子、14年度の事業戦略を聞いた。
―13年を振り返って。
14年3月期上期業績は予算を超える実績となったが、中身をみると、エラストマー事業ではブタジエンの値段が下がり、アゲインストの状況であった。円安は輸出する企業にとってはいいが、原料が高騰する逆風は現在も続いており、下期は上期よりももっと厳しくなるとみている。
一方で高機能材料事業はテレビ向け光学フィルムが好調で高い稼働率を維持したが、これらフィルム向け分野のライフタイムは短く、いつまでも需要があるとは思えず手放しでは喜べない状況である。総じてみると、エラストマーは下期も厳しく、全体の収益にも影響を与える懸念を持っている。
トピックスとしてはシンガポールの低燃費タイヤ用のソリューションSBRのプラントが計画より若干遅れたが、13年9月に完成、年初から量産体制に入る。
―14年度の経営課題は。
エラストマー事業ではゼットポール、NBR、アクリルゴム、ソリューションSBRなどの特殊ゴムを更に強化していきたい。
エラストマー事業では需要構造に大きな変化がある。一つは低燃費タイヤ向けのソリューションSBRの需要業界である自動車産業が成熟産業ではなく、実は開発型の産業に近い成長産業であること。ソリューションSBRは今造っている品番だけで終わることはなく、時と共に更に低燃費性、グリップ性を高めたものが求められてくるので、それらに対応した技術開発が必要となる。
次々に新しい製品、技術開発が要求される産業に変貌してきている。
もうひとつは、原料としてのナフサは有限であり、シェールオイルからはゴムの原料であるブタジエン、イソプレンは生成されず、円安によるナフサ価格高騰でブタジエン、イソプレンの価格が今後、さらに高まってくるだろうということ。このため、高い値段でもペイできる差別化した製品を造っていかなければならず、今まで以上に差別化がゴムに求められてくるだろう。
差別化した製品を次の研究開発のテーマとして、差別化できない汎用ゴムの生産比率を下げていくとともに、自動車用を中心とした特殊ゴムを更に強化していきたい。