第9期の事業を展開するゴム連合。日本経済が景気回復の兆しを見せベアアップ要求への期待が高まる中、瀬尾進中央執行委員長に、今期の具体的な事業方針や取り組みなどを聞いた。
―13年を振り返って。
全体としては大企業主体の景気回復が伝えられているが、日本経済を底支えする中小企業にとっては以前の様な活力ある状況までには至っていない。企業のグローバル展開は今後も更に進み、国内は生産体制の縮小や拠点集約が進むと予想され、労働者にとって大きな不安要素になっている。
業種別では、タイヤ業種で原材料価格の安定や円安により過去最高益の出た企業が多い一方、輸入中心の履物では為替差が収益に大きく影響した。工業品業種では国内自動車生産が回復し、建設・土木関係では震災復興需要が堅調だった。企業による収益の違いが大きく表れた年だった。
―13年春の取り組みの総括を。
13年春季生活改善のとりくみは、方針策定から単組の労使協議までに経済環境が大きく変化する中で行われた。アベノミクスのアナウンス効果は円高修正と株価上昇をもたらし、政府による好業績企業への賃上げ要請が示されるなど異例な環境だった。
その中で「企業の基盤である人材のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を進める」ための労働条件の底支えとWLBの推進等を目指すものとし、各単組において最終協議が進められた。賃上げの状況は依然ベースアップや賃金改善への慎重論が多数を占め、定期昇給や賃金カーブ維持の要求と妥結という結果を見たが、一時金では企業間の明暗が分かれた。政府による賃上げ要請の影響は少なく、従来通り個別労使による真摯な議論積み重ねの結果と考えている。
―14年の景況と雇用動向について。
景気が回復して明るい気分になるのはいいが、消費増税後も経済が持続的に成長できるか不透明。海外に生産拠点や設備投資のウェイトが置かれた現状で国内拠点の集約や閉鎖が進んだ場合、どう雇用が守れるかが気がかりだ。
現在、ゴム関連業界では非正規労働者の割合が約38%を占めている。今後、雇用法制の規制緩和が進めば、さらに非正規労働者が増えて賃金格差が広がる。ゴム業界は熟練技能者が多く「雇用の流動化」の名の下で解雇しやすくなれば、技術の継承だけでなく品質保持にも不安が生じる。昭和53年頃に欠陥タイヤ問題が顕在化したが、あのような事件は二度と起こしてはいけない。その意味でも法律の改悪を阻止するよう訴えていきたい。