東海ゴム工業は3月19日、都内でフレキソ事業説明会を開催し、「AquaGreen(アクアグリーン)」ブランド名で同事業に本格参入すると発表した。
製版工程で溶剤の替わりに水を使うとともに、廃液レスシステムを開発したことで環境負荷とランニングコストを低減。さらに独自技術により、従来のフレキソ版に比べ安定して高精細な画質を実現した。
フレキソ印刷は凸版印刷の一種。日本で主流となっているオフセット印刷と異なり、水性インキが使われるため、環境にやさしい印刷方式として欧州で利用が進んでいる。
ただし一般的なフレキソ印刷では、フレキソ版を現像する際に溶剤を使う必要がある。そこで同社では、創業当時から強みとしてきた高分子配合・加工技術を活用して、溶剤を使わなくてもクリアな画質で現像できる感光性ゴム材料を開発した。
これにより、界面活性剤を1%程度添加した40~50℃の水道水で現像でき、現像から仕上げまでに要する時間も、従来の溶剤現像タイプに比べ4分の1程度の約40分に短縮することができた。
アクアグリーンの現像では、フレキソ版の非画像部を、水をかけながら現像ブラシでこすって落とし、画像部のみを残す仕組みとなっている。従来の溶剤現像機を使っているユーザーも、ブラシを交換するだけで、このシステムに変えることができるという。
アクアグリーンのもう一つの特長は、メンテナンスフリーであること。水現像によるフレキソ製版システム自体は、他社も開発しているが、廃液処理は業者任せになっている。これに対しアクアグリーンでは、新開発の廃液処理ユニットにより、廃液レスシステムを実現した。
具体的には、まず特殊凝集剤により廃液の固形分を除去、次に活性炭フィルターで溶解物質を除去し、処理水は再び現像液として利用する。活性炭の汚れについては、加熱水蒸気により再生することで、メンテナンスフリーとした。この廃液処理ユニットについては、特許出願済みである。
さらに、印刷にとって重要な画質を、従来のフレキソ印刷に比べて向上させていることも、アクアグリーンの特長だ。
フレキソ版の表面は、無数の山型網点で構成されている。従来のフレキソ版は網点形状の先端が丸い「Round―Top―Dot」構造であるのに対し、アクアグリーンでは、先端部が平らな「Flat―Top―Dot」構造となっている。
このため、印圧による先端の変形が小さく、安定した高精細な画像が得られ、デザイン通りの画質を忠実に再現することが可能になった。
同社ではアクアグリーンを14年度下期から順次市場展開し、フレキソ事業の売上高を15年度に40億円とする計画だ。
説明会の冒頭、あいさつした西村義明社長は「中期経営計画で2020年代初頭に売上高1兆円を目指しており、それを実現するため、既存事業の持続的成長や新市場・新分野への事業展開などを図っている。フレキソ事業は環境分野の新規事業として展開していく」と述べた。
2014年03月31日